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お薦めの本  1
『ルドルフとスノーホワイト』 
斉藤洋・作 杉浦範茂・絵 講談社(201211月)


『ルドルフとイッパイアッテナ』シリーズの四冊めとなる本書は、やっぱり面白い。

そもそも、魚屋の店先きからシシャモを失敬して追われたルドルフが、停まっていた小型トラックの荷台に逃げこんで、岐阜県から東京の江戸川区まで運ばれてしまったという場面から第一話が始まったのだった。

そこで出会ったのがトラ猫のイッパイアッテナ。イッパイアッテナというのは、ルドルフが自己紹介しながら名前をたずねたとき、「おれの名前はいっぱいあってな……」と言われて、ルドルフはそれが彼の名前だと思い込んでしまうのだが、実は相手次第でいくつかの名前で呼ばれながら生きているという次第である。

もともとの名前はタイガーという飼い猫だったが、飼い主がアメリカに行ってしまってノラ猫になった。

ルドルフと出会ってから、自分の縄張りのなかでずっと相談相手として面倒を見ている。

字の読み方や書き方もイッパイアッテナに教えられて、それはルドルフの特技となり、ノラ猫として生きていくのにとても役立っているのだ。

イッパイアッテナは、飼い主だった日野さんが帰ってきて元の家に戻り、ルドルフも夜は日野さんの家で寝ている。なにしろ猫用の扉があり、出入り自由なのだから――。

それぞれ個性的な猫たちである。隣りの家で飼われているブルドッグのデビルも、今ではルドルフたちの仲間として、行方不明になったミーシャの子どもを探すために、得意の嗅覚を駆使して協力する。

ブッチーという雄猫が、出かけた先きの猫の縄張りでけがをして帰ってきたことからストーリーが展開していく。出かけていったルドルフが出会ったのは、全身真っ白な毛並みのスノーホワイトという雌猫だった。彼女は、入院中の兄シリウスに代わりボスとして縄張りを守っている。

誤解が重なって一悶着が起きた状況と、スノーホワイトと和解する迄の出来事がストーリーの前半だが、それぞれの啖呵を交えたやりとりが、なんとも小気味好い。スノーホワイトとイッパイアッテナの、そこはかとない好意の抱きようも微笑ましく、ルドルフが大人に近づく一歩となりそうである。

後半はミーシャの三匹の仔猫のうち、もらわれ先きが決まったチェリーが居なくなって、その捜索に奔走するルドルフたちの一部始終が描かれている。

次つぎに巻き起こる事態のなかで、デビルや猫たちの活躍は読者の子どもたちにとっても、ハラハラドキドキの連続となるに違いない。

上質のエンターテイメントは、時を経ても大人・子どもを問わず、楽しく活力を与えてくれるということを、改めて確認した読書となった。

 

 


 
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