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3丁目 妖怪図録 7「イワガン」 |
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洋子から、深夜に電話を貰い、奈緒は戸惑った。 「奈緒さん、明日、何か予定有りますか」 (はあ?なんで?) 独身の奈緒は、休日を、朝寝と家事に当てている。それを、予定と言えるか……。 「実はね、裕実の事でお願いしたい事が有って……」 と、いいながら、電話の向こうで洋子が咳き込んだ。風邪を引いているらしい。 マンションの同じ階というだけの知り合いだが、奈緒は、洋子に借りが有った。 以前、奈緒がエレベータ前で転んだおり、救急車を呼んでもらった事が有るのだ。 「特に、予定は有りませんが、何か?」 「よかったわ、じゃお願い出来ますか、ぶどう狩り。実はね、日帰りバスツアーを申し込んで あるのよ。裕実がとっても楽しみにしていて……。お友達もいっしょだから」 それは、断り難い申し出だった。奈緒は、裕実とは廊下で顔を合わせる位だが、愛らしい子だ と、好感を持っている。子どもとバス旅行は不安が有ったが、好奇心も湧いた。 「私で大丈夫ですか、裕実ちゃん?」 「大丈夫よ!お友達も一緒だから」 と、いわれて、結局、奈緒は引き受けた。 翌日は好天に恵まれて、気分も良好。 「裕実ちゃん、幾つだっけ?」 「五歳」 裕実が、身をくねらせながら微笑んだ。 「五歳にしちゃ、大きいね。人ごみの中歩く時、手とか繋ぐかな?」 奈緒が聞くと、裕実はこくりと頷いた。 緊張しつつも浮き立つ気分で、奈緒は、裕美を伴って電車を乗り継ぎ集合場所へ向った。 そして、「お友達」と合流した。が! 「久しぶり!裕実ちゃん、小母ちゃんを覚えてる?ほら、梨狩りのとき一緒だった沖田のおば ちゃんよ」 早口でまくしたてるその人は、奈緒の母親に近い年齢に見えた。 裕美は、覚えてないと、首を横に振った。 てっきり、一緒に行くのは裕実の友達とその母親とばかり思い込んでいた奈緒は、 「あのー、お子さんは……?」 と、一人で来ていた沖田にたずねた。 「うちの子はアメリカよ。海外転勤なの」 (はあー?何それ?) 奈緒が、祐実に目をやると、そこには心細げに奈緒を見上げる裕美の顔が有った。 奈緒は、裕美に微笑んでみせて、繋いでいた手に力をこめて、頷いた。
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