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砂谷3丁目 妖怪図録 6「欲ばり棒」 |
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千恵子は、朝の5時半から、動き詰めだ。 起きるなりシャワーを浴びて洗髪して、髪をセットして化粧を済ませる。セレブな印象作りに は欠かせない行程だ。 それから、長女の麻里と次女の安奈のための弁当を作る。私立の小学校に通う二人には、給食 が無い。 たかが弁当だが、されど弁当。どれだけ子どもに手をかけているか、言い換えれば、どれほど 子どもを愛しているかのバロメーターに成る弁当。手抜きは出来ない。 それが済むと、二人の娘を起こし朝食をとらせる。これは軽く、シリアルとバナナだ。 食べている間に、二人の長い髪をお下げに結う。 「ほら、ジッとしてて!もう、急がしいんだから。ほらほら、こぼしちゃダメ、だらしがない わねー。ほんどドジなんだから」 千恵子の怒鳴り声は、目覚まし代わり。 夫の正太郎が起きて来て、長男の正一郎を起こす。 正太郎が、正一郎と朝食を食べている間に、千恵子は、麻理と安奈を車で駅まで送る。それ も、線の違う二方向の駅だ。 長女の麻理の時は、子どもが一人という事も有って、付きっきりでお受験の準備をした努力が 実り、第一志望の私立に入れた。 その油断も手伝ってか、正一郎が直ぐに出来たこともあってか、充分とは言えない準備のため 安奈は、姉と同じ学校に入れなかったのだ。それで、二人は違う学校で、利用駅も違う。 (何としても、安奈を編入させなくちゃ) 千恵子の心は、休まらない。 二人を駅まで送って戻ると、正太郎と正一郎がマンションの玄関で待っている。 又、正太郎を駅まで送るのだ。 夫は、バスで駅まで行くと言うが、みっともないと、千恵子は頑として譲らない 夫を駅で降ろしてからが、本番だ。 「正一郎君のママー、お早うー」 駅前のターミナルで待っていた健太郎君のママが、BMWの運転席から手をふる。 千恵子は、手をふり返して、その後を着いて走る。正一郎の幼稚園へ向けて。 正一郎が幼稚園で遊んでいる間、千恵子達ママ連中は、父母の会の活動をする。 バザーの用意をしながら、言葉の端々まで神経を使って、上品に、しかも当たり障り無く会話 を弾ませなければ成らない。 千恵子の一日は、心休む間無く過ぎて行く。 |
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