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児童文学作家 辻 邦と 
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2017年 12月8日 更新

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 「この本」

 私は、子どもだったころ「本」を読むのが好きでした。

 「本ばっかり読んでないで外で遊びなさい」といわれても、「また本を読んでる!」と叱られても、

本を読むのは止められませんでした。

 私が好きだった本、感動した本、元気づけられた本、お薦めしたい本。「この本」はそんな本です。


「ニルスのふしぎな旅」上下 ラーゲルルーブ・作 菱木晃子・訳(福音館書店)

この本について 

この本は、1906年・1907年に出版された本です。(100年以上世界中で読まれています)

作者のラーゲルルーブは女性で、スウェーデン出身。この物語の舞台もスウェーデンです。

ラーゲルルーブは1909年ノーベル文学賞を受賞しました。

 

あらすじ    

スウェーデン南部の田舎に住むニルスは、わんぱくで、時にはいたずらが過ぎて動物をいじめてしまう少年でした。ニル

スの乱暴には両親もほとほと手を焼いて困り果てていました。ニルスも、自分はお父さんからもお母さんからも愛されて

いないといじけていました。それでも、乱暴はやみません。

 ある日曜日の朝、教会にも行かないで、留守番を決め込んでいたニルスは、妖精のトムテを捕まえて悪戯を仕掛けました

。とこらが反対にトルテに魔法をかけられて小人にされてしまいました。

 小人にされたニルスは、動物たちの言葉がわかるようになりましたが、普段ニルスにいじめられていた家畜たちがニルス

に仕返しをはじめて、ニルスは大変!

 その頃、庭では、ニルスの家で飼われているガチョウのモルテンが、ガンの群れに「飛べない鳥!」とからかわれ、悔し

くて力いっぱい飛び立ちました。

 それを見たニルスは、無我夢中でモルテンに飛び乗りしがみつきました。モルテンは、お母さんが大事にしている太った

ガチョウだからです。逃がすわけにはいかないと思ったんです。

 これがきっかけで、ニルスとモルテンは、女隊長アッカの率いるガンの群れと一緒にラップランドを目指して長い長い冒

険の旅に出かけることになりました。でも、人間のニルスには困難と試練の連続。ニルスが沼地の葦の茂みの間で寝ること

ができるでしょうか?何を食べたらいいの?ニルスはモルテンの翼の間で休ませてもらいました。生の魚も生まれて初めて

口にしました。草の実、木の実、パンのくず何でも食べました。鳥たちの助けがなければ生きてゆけない。ニルスには感謝

の心が芽生え、自分も皆の助けになろうと頑張りました。ニルスは人間の言葉が理解できるので大いに役立ったのです。

 その後、トルテに「魔法を解いてやろうか」といわれた時も、仲間たちとのラップランドへの旅を選んだほどニルスは冒

険の旅に心惹かれていました。しかし、冒険に危険はつきもの、死にそうな目に遭ったのも一度二度ではありません。その

度、ニルスは仲間に助けられ、ニルスも仲間のガンの命を救ったり小さな動物を守ってあげたりしているうちに、小鳥や動

物に好かれ信頼される少年へと成長してゆきます。そして、帰宅の時が来ました。帰り着いた我が家に待っていたのは…?

お父さん、お母さんは?それは、読んでのお愉しみ。

 読者である私は、ニルスと一緒に空の旅と地上の旅を満喫しました。スウェーデン各地の様子。穀倉地帯あり、工業地帯

あり、海辺の町あり。様々な人の暮らしとそこにまつわる昔話を楽しみました。昔は、巨人やトロルや妖精が住んでいた国

です。興味深い話が沢山です。

 この本は、小さな物語がいくつも鎖の様に繋がった物語です。様々な物語それぞれが面白かったのですが、ひと際心に残

ったのは「マガモのヤッロ」の話でした。かいつまんで紹介します。

東ヨーク平野にあるトーケルン湖は干拓される途中でした。でもなかなか湖の干拓は進みませんでした。湖は水辺にすむ

生き物にとっては楽園でした。そこに住んでいた若いマガモが猟師の鉄砲に打たれ傷つき倒れたのですが、農家の奥さん

に助けられヤッロと呼ばれそこに住み着くことになりました。恐ろしい猟犬のセサールとも心を通わせ、この家の三歳の

男の子ペール・オーラと仲良くなりました。ヤッロがこの暮らしが好きになり始めたころ、湖に連れてゆかれ縄で縛られ

ました。ヤッロはもがいて鳴き声を上げました。その声を聞きつけたマガモの仲間がやってくると!待ち受けていた猟師

に打たれる…。ロッコは囮として生かされていたのです。その時、小さな人間(ニルス)がヤッロの縄を切って「ヤッロ

、逃げろ」と逃がしてくれた。セサールもそれを見逃してくれたのです。でも、三歳のペール・オーラは、諦められませ

んでした。湖にヤッロをさしに行きました。

ペール・オーラが居なくなったのを知った奥さんは、探し回りました。でも、日が暮れてもペール・オーラは見つかりま

せん。悲しみにくれながら奥さんは考えました。(人間と他の生き物も変わりがないかもしれない。マガモも子どもを失

ったとき心配だったろう)と。その時セサールが奥さんを外に連れ出しました。その先にいたのは、ペール・オーラでし

た。このことがあって、農家の奥さんと主人は考えました。(湖を干拓するのは有益なことに違いないけど…多くの生き

物が住んでいるこの湖でなくてもいいわ)と。そして、干拓の契約にサインをしないことにしました。

メモ

訳者があとがきで、私が印象に残った章についてこう書いています。

一部抜粋「訳しおえたいま、とくに印象に残っている章があります。ひとつは、十九章のトーケルン湖の干拓をめぐる話

です。地球環境の破壊が深刻化する現在ですが、すでに作者は百年も前から自然保護の重要性を説いていたのです。

―中略―あたかも作者自身が『人間もまた自然の一部であるのだから、おごり高ぶることなく、その知恵と勇気をもって

、地上のすべての生き物のために考えてほしい』と、私たちに訴えかけているように思える。

この物語は、スウェーデンの初等教育の副読本、地理読本として書かれたそうです。1980年に日本でテレビアニメ化され

て、何回も再放送がされたので、観た人もたくさんいるでしょう。私も、子どもたちと一緒にアニメも見ました。我が家

の子供たちは、現在40歳から50歳ですから、お父さんお母さん世代ですね。

今回、私が読んだのは、福音館書店刊(上巻515ページ下巻533ページ)分厚いものですが一気に読めます。地元の粕谷図

書館で借りました。今でも現役の本なのでしょう。

この本の思い出

「この本」の一冊目にこれを選ぼうと思ったのは、突然心に浮かんだからです。

すっかり忘れていましたが、この本は、私が自分で選んで買った最初の本でした。小学4年生の時、私は東京都千代田区

立「番長小学校」に通っていました。その1学期が終わった日、「夏休みだぞー」と学校の昇降口を出たら、目の前に、

本屋さんの出張販売の露店が出ていたのです。夏休みにお読みなさいと言わんばかりに、数々の本が並べられて…。お金

をどうしたかは記憶がありません。大急ぎで家まで取りに帰ったのでしょうか?私は越境通学で、今でいうJR信濃町と

いうところから隣駅の四ッ谷まで歩いて通っていたので、片道30分はかっていたと思いますが、走って取りに行ったので

しょうかね。いろいろ並んだ本の中から、私は地味な表紙の、上巻下巻に分かれた長い物語の「ニルスのふしぎな旅」を

選んだ記憶は確かにあります。子どもが買うには、安くない買い物だった覚えもあります。

今回調べたところ、1953515日発売の八崎源九郎訳「ニルスのふしぎな旅」上下(岩波少年文庫)というのが出てい

たという記録が見つかりました。きっとその本を買ったのだと思います。

長い夏休みの間に楽しみながら読んだのでしょうか?いいえ、多分その日のうちに、「ご飯も食べないで」と叱られなが

ら、「早く寝なさい」といわれても、一気に読み切ったのだろうと思います。私は、今回もそうしてしまいましたから。

 

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