くぅばーたん 福になる4「雪山、参加」

 「おまえさんたち、良い時に来なすたな。暮れに雪が充分降ったからね。スキーもそりも、調

子いいでしょう。雪があって、暖かくて、今日あたりは春スキーのようだよ」

 野口の父ちゃんの職場の同僚の親戚がやっている民宿にやって来た野口一家。それに便乗し

て、キーちゃんと谷さんも、スキーにやって来たのだが‥‥。

 キーちゃんは、中学生の時に、学校のスキー教室に参加したのが唯一の経験のスキー初心者。

 「親父が郵便局員だったから、冬休みは、どこにも行けなくて‥‥」

 と、キーちゃんは言い訳した。

 「郵便局勤めはうちも同じだけどね」

 野口の父ちゃんが、ヘヘッと笑った。 

 野口の父ちゃんと母ちゃんも、郵便局員だ。

 「民営化で、何もかも変わって‥‥。勤務評定もどうなることやら」

 「何か気が抜けちゃったのよねー、局の仕事にさ。今年は、二人して休み取っちゃった。や

けっぱちっていうか‥‥、反抗期」

 「正月に、朝から温泉に入って、こたつで飲むビール、これが夢だったからね」

 そういいながら、野口の父ちゃんと母ちゃんは、ぐいっとビールを飲み干した。

 「未だ若いんだもんね、どこ行ってもやっていけるわよ」

 母ちゃんは、ガハハッと笑ったが、父ちゃんは、背中を丸めて指を横に振った。

 「新年早々、暗いなー。転職ですか?クビですか?」

 谷さんが、野口の父ちゃんの顔をのぞき込んだ。

 父ちゃんが、プルプル震えながら、

 「縁起でもない事言わないでよ、繁忙期に休んで、チョット良心が痛んでるだけなんだから。

クビだなんて、春から縁起が悪い」

 と、びくついてみせた。それから、キーちゃんと谷さんにビールを勧めながら、

 「そこヘ行くとお二人さんは、いつも自由でうらやましいよ」

 と、するめも勧めた。

 キーちゃんは、ミュージシャン。シンガーソングライターだ。

 谷さんは、フリーのカメラマン。

 「自由と言うか、時間が好きに使えると言うか、売れないと言うか、仕事が無いと言うか‥‥

‥。時間は有るけど金が無い、不安定な生活で」

 と、谷さんが言ったので、キーちゃんは、

 「正月ぐらい、景気良い話しようよ」

 と、こたつにもぐり込んだ。

 そこへ、裕信君と真一君が、飛んで来た。

 「キーちゃん、早くおいでよ」

 「遊ぶって約束したでしょ、来てよ」

 無理矢理こたつから引きずり出されたキーちゃんは、仕方無さそうに、でも内心嬉しそうに、

いった。

 「しょうがねー、お前らの相手をしてやっか。オレのスキーの腕前見て驚くなよ」と。

 そう言われても、驚かずにはいられないのだが‥‥‥。

 キーちゃんのスキーの下手さは、驚くばかりなのだ!