くぅばーたん 福になる22「ご恩巡り」

 今日のパーティーのメニューは‥‥‥。

 お赤飯におでん。コンビーフのコロッケに海老フライ。サーモンのマリネに豚の角煮。五郎さ

んの好物ばかりだ。

 「コンビーフのコロッケ、なつかしいよ。くぅばーたんのお婆ちゃんの得意料理よ」

 ライさんが、手を大きく広げて感激した。

 と、玄関からかすれ声が聞こえた。

 「ここに、そのコロッケをなつかしく思う者が、もう一人居ます」

 くぅばーたんが振り返ると、そこに居たのは、平安さん。今、病院を退院して来た所。車椅子

に体を縮めて座っている様は、ちんまりした、お爺さんの置物の様だった。

 「ライさん、覚えてますか?安平さんですよ。昔、この『大志館』に住んでいた」

 くぅばーたんの言葉が終わるか終わらないうちに、ライさんは、安平さんに抱きついた。

 「なつかしい!あなた、大陸さんね」

 ライさんの言った「大陸さん」という呼び方に、くぅばーたんと五郎さんと千兵さんが、「あ

あ」と、大きくうなずいた。

 「安平さんは、大陸からの引揚者だったから、皆にそう呼ばれていたんだ」

 と、五郎さんが説明。と、タッ君がきいた。

 「ヒキアゲシャって、どんな車?」

 「え?引揚者のシャは、車じゃなくて」

 「人間のことだよね。大力で、何でも引っ張ってあげちゃう人の事」

 と、サーちゃんが、得意げに言ったものだから、皆は大笑い。

 「大力じゃなくて、大陸。大陸は、中国大陸のこと。中国は日本のお隣りの国だけど、昔、日

本は中国に戦争を仕掛けて、中国に日本人が住む国を作っていた事が有る。日本が負けて、戦争

が終わって。そこに住んでいた日本人達は、日本に帰って来た。それが、引揚者。皆さん、ご苦

労なさったんだよ」

 五郎さんが、ゆっくりと子ども達に説明。

 「大陸さん、あなたも命の恩人です」

 ライさんが、安平さんの手を握った。

 「いや、私は、人に恨まれこそすれ、恩義を感じてもらう事は‥‥‥」

 安平さんが、恥ずかしそうにうつむいた。

 「大陸さんは、恩人です。ほら、野良犬を、棒で打ち殺してくれました」

 「犬を、殺した!」

 子ども達には、ショック!

 「そうだわ、そうよ。あの狂犬よ」

 くぅばーたんは、思い出して、怖がった。

 「そうだね、あの狂犬病の野良犬だ」

 「大陸さんがやっつけてくれてなかったら、オレたち、ここに居なかったかもしれない」

 「私、襲われました。死ぬかと思った。あなたにも、恩返しします。何します?」

 ライさんは、安平さんの手を握って離さない。

 「いや、もう十分すぎるほど、くぅばーたんに親切にしてもらいました」

 「そうですね。ライさん、あなたが、私の絵を買ってくれて、そのお金の一部で、安平さんの

入院費払いましたからね」

 ライさんは、ビックリ!」

 「それ、私の知らない事」

 「オホホッ!知らないとこで、ご恩は巡るって。うちのお婆ちゃんが言ってました。クフ!」