くぅばーたん 福になる21「珍客、チンライ」

 「さー、パーティーを始めよー」

 皆が、乾杯をしようとした時!

 「おじゃまするよ」

 と、入って来たのは、千兵さん。

 「おやおや、ほんとにじゃまだこと」

 くぅばーたんが、いつもの憎まれ口。

 「おっと。そんなこと言っていいのかな」

 千兵さんが、ペロリとオデコをなでた。

 「千ちゃんも、さあ、座って」

 五郎さんが、千兵さんに椅子を勧めた。

 その五郎さんに、千兵さんが、指を二本立てて見せた。

 「二人?お客さんといっしょなの?誰?」

 「大志館」の皆の顔が、いっせいに玄関を向いた。

 見ると、千兵さんの後ろに隠れて、小柄なおじいさんが立っていた。

 「ほら、珍しい人だよ。当ててごらん」

 千兵さんが、くぅばーたんの顔を見た。

 くぅばーたんは、立ち上がって、玄関までゆっくりと歩いて行って‥‥、

 「まさか、あなた、ライちゃん!あの、チンさんのとこの?」

 と、息をのんだ。

 おじいさんは、丁寧に頭を下げると、

 「ご無沙汰しました。お許しください」

 といって、もう一度、深々とおじぎをした。

 「ライちゃんって、くーちゃんのとこに居た、中国人の?こりゃ珍しい。珍客だね。珍客、チ

ンライ。請来、請来」

 五郎さんは、皆には通じないダジャレを連発して、大はしゃぎ。

 千兵さんの鼻が、得意そうに膨らんだ。

 「実は、ここの隠し部屋に有った『オズの国』とかいう、壁に描いた絵を買ったのは、何を隠

う、この人だよ」

 「父の絵のコレクターのアメリカ人って、ライちゃん?」

 くぅばーたんは、あんまりビックリしたので、胸が苦しいくらいだった。

 「はい。私の父さんが、死ぬ前に、どうしても、もう一度あの絵が見たい、あの絵を、枕元に

飾りたいと言いました」

 それから、チンさんは、「大志館」の皆の顔をぐるりと眺めて、話し出した。

 「私の父さんは、戦争が始まる前、中国から日本に勉強に来ていた留学生でした。それが、戦

争になって、日本は中国でも戦争していて、私の父さん、スパイになれといわれて、逃げまし

た。そして、ここに隠れていました。私の母さんも、私も一緒に。くぅばーたんのおじいさん、

私の一家の命の恩人です。あの隠し部屋に隠してもらって、命助かった」

 「それで、あの絵を?」

 「はい。戦争終わって、私達アメリカへ行って、仕事成功して。くぅばーたんのお父さんの

絵、買いました。それでも、一番欲しかったの、あの隠し部屋の絵でした」

 それから、陳さんは、目をしぱしぱさせて、

 「あの絵の『オズの国』の隅に居た亀、私が書いた。いたずら書き。だれにもないしょ」

 と、ニッコリ笑った。