くぅばーたん 福になる17昔なじみのよしみ

 五郎さんは、朝から浮かない顔。

 「どうも、腹の具合が悪くてね。ゴロゴロいってるんだよ」

 くぅばーたんは、

 「ゴロウの腹が、ゴロゴロなんて、朝からダジャレはごめんですよ」

 と、知らん顔。

 五郎さんが、昨夜の節分の豆を、きっちり年の数だけ食べたのを知っていたからだ。

 「だからいったでしょ、『もう六十四歳なんだから、加減して食べなさい』って。それを、

『縁起物だから』なんて、強情はって食べるから、お腹をこわしたのよ」

 「もう‥‥‥、朝飯は、いらない」

 そういって、五郎さんは、ベッドにもぐり込んだ。

 「腹がゴロゴロの五郎は、布団に腹這いになってゴロゴロすることにする」と。

 そこへ、カケス建設の千兵さんがやって来た。

 「どうしたの、五郎ちゃん。病気?」

 「千ちゃんこそどうしたんだ、こんな朝早くから」

  と、五郎さんは、ごそりと起き上がった。

 「夕べの豆まきで、鬼は追い払ったはずなんだけど、まだ残っていたのかしら」

 くぅばーたんは、千兵さんに、コーヒーをすすめながら、舌を出した。ふたりは、子どもの頃

からの、ケンカ友達。

 千兵さんは、コーヒーを一口すすって、

 「うー、うまい!くーちゃんのコーヒーは、日本一だね」

 と、目を細めた。

 「お世辞を言ったって、だめよ。何企んで来たの」

 「企むなんて‥‥‥、人聞き悪いなー。良いもうけ話だから、一刻も早くと思って」

 千兵さんは、カップから口を離さず答えた。

 「もうけ話?だれが儲かるのやら」

 二人の様子を、笑いながら見ていた五郎さんが、突然顔を歪めてトイレへ駆け込んだ。

 「どうしたの、五郎ちゃん」

 「節分の豆の食べ過ぎ」

 「豆食って水飲むと、てきめん下痢ぴーだもんな。ビールも飲み過ぎたんじゃないの」

 千兵さんが、コーヒーのお代わりをしながら言った。

 「それより、話は何?朝は忙しいんだから。それじゃなくても、武蔵さんの絵を展示する画廊

の事で、てんてこ舞いよ」

 「そうそう、それ!話は画廊の事だけど。あの画廊、売る気ない?」

 くぅばーたんは、目をぱちくり。

 「売るって‥‥、今作っている最中よ」

 「あの場所が欲しいってお客が居てさ」

  話を最後まで聞かないうちに、くぅばーたんは、即決。

 「売って上げる。昔なじみのよしみで」と。

 そう言う、くぅばーたんの目がキラリ。

 誰にも言えなかったけど‥‥‥。

 くぅばーたんは、

 「自分には、画廊経営は無理だ」

 と、音を上げていたのだ。