くぅばーたん 福になる14おさななじみ

 五郎さんの畑のネギが、食べごろになった。

 「今晩あたり、『すき焼き』なんてどうかね。うまいネギがあるから」

 と、五郎さんが言った。

 そこで、くぅばーたんは、駅前の「肉清」へ、おいしい「牛こま」を買いに行った。五郎さん

じまんのネギをみやげに持って。

 「肉清」のおかみさんの清子ちゃんは、くぅばーたんのおさななじみ。いつも、おいしい肉を

おまけしてくれる。

 「あらー、いつ見てもおいしそうなネギだ事。これなら、肉も映えるわ」

 清子ちゃんは、ネギを見て大感激。

 「おおげさね、たかがネギじゃないの」

 と、くぅばーたんが笑うと、

 「たかがネギ、されどネギよ。すき焼きは、肉屋だから大きな声で言えないけど、ネギが決め

て。ネギが良いと、肉なんて何でも良いぐらいよ」

 と、清子ちゃんが大きな声で言ったので、店に居たお客さん達が、大笑い。

 「そんな話は,奥でやってくれ。商売のジャマだよ」

 清子ちゃんのだんなさんが、苦笑い。

 そこで、くぅばーたんは、奥でお茶をごちそうになる事にした。

 「清子ちゃんの『感激や』は、子どもの頃と変わらないわね」

 熱いお茶をすすりながら世間話だ。

 「子どもの頃と変わらないって言えば、この間、淳子ちゃんと会ったのよ、教会で」

 「淳子ちゃんて?まさか,あの淳子ちゃん?あの夜逃げの!」

 「夜逃げじゃないけど、事情が有って転校して行った‥‥あの淳子ちゃん」

 「えー、会いたかったわ。あたしも会いたかったのに!どうして知らせてくれなかったの!あ

たしも呼んでほしかった」

 「でも、教会の前で、立ち話しただけだから‥‥」

 それを聞いた清子ちゃんは、目に涙をうかべて、くぅばーたんの手を取った。

 「くーちゃんらしいっていえば、らしいけど‥‥、淳子ちゃんはね、お父さんが商売に失敗し

て、一家で突然引っ越したのよ。だれにも何にも言わないで、さよなら無しで」

 「それが‥‥、夜逃げね」

 「そう。それだから、連絡が取れなくて、同窓会の知らせも送れなくて。小学校の同窓会に、

一度も来た事が無いのよ。それって、淋しいでしょ。かわいそうよー」

 清子ちゃんは、淳子ちゃんの事を、本当に気にしていたのだ。

 「住所ぐらい、聞いたわよね」

 と、涙目の清子ちゃんに言われて、くぅばーたんは、頭を下げて首を横に振った。

 「くーちゃんらしいけど‥‥‥」

 清子ちゃんは、大きな溜め息をついて、それから、しくしくと泣き出した。くぅばーたんも、

ワーッと泣き出した。

 「あたし、何にも知らなくて‥‥、ごめんね、清子ちゃん。ごめんね,淳子ちゃん」と。