くぅばーたん 福になる12「ソリ遊び大会」

 「崖」は、元は小高い丘だったが、周辺が開発されたせいで、「崖」になってしまった。

 「崖の上」へ続く道は険しく、急勾配な分、そり遊びにはうってつけだ。

 五郎さんを先頭に、サーちゃん、タッ君、裕信君、真一君兄弟に、ナッちゃん。それに、正太

郎さんとキーちゃんと谷さんが交ざり、「大志館そり遠征隊」は出発だ。

 雪は七.八センチほど積もっていて、吹きだまりにはその倍ほどの雪があった。

 「長靴の中に、雪が入っちゃうよ」

 と、ナッちゃんが、楽しそうな悲鳴を上げた。

 「だから、お母ちゃんが、長靴をポリ袋でくるんでおけって、言ってただろう」

 キーちゃんが、ナッちゃんに肩を貸しながら、長靴から雪を出してやった。

 「どんなにガードしたって、無駄だよ。ほらごらん、子ども達は、わざと雪の深いとこを歩い

てんだから」

 と、谷さんが、笑った。

 「おーい、気をつけて歩きなさいよ。こんな所で転んだら、命が危ない。雪倒れ、行き倒

れーってね」

 五郎さんのダジャレに、サーちゃんと裕信君が顔を見合わせて、「寒?い」だ。

 「崖」に着いた時には、皆体が冷え切っていたが、持って来たココアを分け合って飲んで、元

気いっぱい。

 バラの模様の着いたアンティークなそりは、くぅばーたんが子どもの時に使ったものだから、

六十年近く昔の物だ。

 これと、プラスチックのそり二台と、大人用の古いスキーを利用した急ごしらえのそり。それ

らを交代で使って、そり大会だ。

 「そりの滑り方は、ゆっくりだよ。なぜかというと」

 と、五郎さんが言った所で、

 「そりはそろーり」

 と、正太郎さんとキーちゃんが、先取り。

 二人にとっては、耳にタコのダジャレ。

    「キャー、怖い!助けてー!」

    「わー、ぶつかるー。死ぬー!」

 

 キャーキャー、ワイワイ、大騒ぎ。

 そこへ、大きな声で怒鳴りながら、崖の上から、杖を突いたお爺さんが現れた。

 「うるさい!止めろ!そこで、遊ぶな!」

 その声に驚いて、五郎さんが振り向くと、

 「なんだ、五郎さんじゃないか」

 と、怒っていたお爺さんは急に優しくなって、ニコニコ顔。

 「おーい、五郎さんが来てるよ」

 と、大きな声で、叫んだ。

 「五郎さんって、郵便屋さんだった?」

 「雪だから、心配して来てくれたんかね」

 崖の上の家々から、人が出て来て、

 「あらー、そり遊びかい。若いもんは良いね」

 「そりなら、うちんとこが広くていいよ」

 「ちょうどすいとんが煮えた所だ。さあさあ、皆で寄っておくれ」

 と、口々に、歓迎。

 五郎さんは、崖の上の人達の人気者だった。