くぅばーたん 福になる11「悪魔のささやき」

 日曜日、雪が降った。そして、積もった。

 「この分じゃ、一日中降るかな。雪かきしても、又積もるかもしれないね」

 五郎さんは、雪かきの心配だ。

 「長靴が良いかしらね、やっぱり」

 と、くぅばーたんが言うと、五郎さんは、

 「出かけるの?こんな日に!」

 と、大げさに驚いてみせた。

 「今日は、日曜でしょう」

 くぅばーたんは、大きな鍋にココアを溶いて、牛乳を入れている。

 「日曜って‥‥、教会へ行くの?」

 くぅばーたんは、おじいちゃん,おばあちゃんの影響で、子どもの頃からのクリスチャンだ。

でも、大人に成ってからは、あまり教会へ行ってなかった。だが、ママが死んでからは、毎週、

行く様になった。

 「こんな日に無理に行く事は無いでしょう。そんなに‥‥‥、ゴホン」

 (熱心な信者でもないのに)

 と、五郎さんはいいかけて、咳払いをした。

 くぅばーたんは、ココアを火にかけながら、

 「こんな日は、どっかへ行きたいわ。雪の中を歩くの、楽しいじゃない」

 と、笑った。

 熱いココアに、たっぷりバーターを塗ったトースト。そして、湯気のたったゆで卵。

 「雪を見ながら、ぜいたくねー」

 くぅばーたんは、うっとりした顔でココアをすする。

 「雪道で転んでごらん、『老女転倒』って、新聞に出るよ。老女だよ、嫌でしょ?」

 五郎さんは、何とか外出を止めたいらしい。

 「あら、あたし、まだ、老女じゃないでしょ。六十四歳だもの」

 「六十過ぎたら、老人でしょう」

 「まあー、そんな時ばっかり、年寄り扱いですか。嫌ですね。せいぜい転んだ時目立つ様に、

赤いコートを着ていきましょう」

 「それじゃ、季節外れのサンタでしょ」

 その時、タッ君が飛び込んで来た。

 「ジーちゃん、雪だよ。そり出してよ」

 「そりって?そんなもの、あったかな」

 「パパが、子どもの時に使ったやつ」

 「そんな昔の‥‥、とっくに薪に‥‥」

 と、言いかけて、五郎さんは思い出した。くぅばーたんが子どもの時に使った、バラの模様の

そりが、屋根裏にあった事を。

 「よーし、出してやろう。そり滑りなら、良い場所を知ってるぞ。崖の下の坂道はよく滑るか

らね」

 五郎さんも、雪の中へ出かける気になったらしい。

 「うん、行こー!ぼく、皆呼んで来るよ」

 ごろうさんは、元気よく椅子から立ち上がった。

 「くーちゃん、ココアを、ポットに入れてよ。雪の中でココア、おいしいよ。くーちゃんも教

会なんて行くの止して、皆と行こうよ」

 なんか、 五郎さんは、くぅばーたんが教会ヘ行くのがイヤみたいだ。