ブラシの木   作・青山和子

 ブラシの木を知ってる? まっすぐのびた細い枝に、たくさんの長いオシベが紅色の花を咲かせて、

小さなブラシがならんでいるように見えるんだよ。

 川べりに、一本の細い若木が立っていました。春になると、紅色の糸のような花が咲きます。

風がふくたびに、だれか遊びにこないかとあちこち見まわしていましたが、だれもいません。

 「つまんないな」

 もっと遠くまで見ようと、風に向かって枝をゆすったとき、

 「フエッ、フエッ、フエックション」

 草むらから聞こえた小さなクシャミ。

 「ひどいなあ、やめてよ」

 野ねずみがとびだしてきました。

 「あれ、どうしたの?」

 「あんたの花ふんで、クシャミがとまらないんだよ。フエーッ、フエックション」

 野ねずみは、キィキィ声でおこりながらかけていってしまいました。

 「おまえさんの花は、シベがいっぱいだから、それだけ花ふんもとぶんだよ」

 桑の木で休んでいた山鳩が、しょんぼりしている木に話しかけました。

 「じゃ、どうすればいいの?」

 川をわたってきた風にふかれて、紅色の花がサワサワとゆれています。   

 「わからんね。それにしてもおまえさんの花は、おもしろいかたちだな。まてよ・・・・」

 山鳩は、パッと飛びたつと、広げた羽をスーッと花に近づけました。

 「お、これはきもちがいいぞ。羽のつけねがくすぐられるようだ。つぎはこっちだ」

 びっくりしている若い木のまわりを飛びながら、山鳩が言いました。

 「おまえさんの花にさわったところは、風がとおりぬけていくよ。ああ、さっぱりした。また、寄らせておくれ」

 若い木はうれしくて、枝いっぱいの細い葉と花をゆらせて、山鳩を見送りました。

 次の日から、いろんな鳥たちがやってきました。せきれい、しじゅうから、すずめ、めじろ、からす、

なかには、ちょんちょんと花をついばんでいく鳥もいます。

 夏がくるころには、花は咲きおえていましたが、いちばんはじめにきた山鳩は、それからも時どき遊びにきました。

 「きょう、町でおまえさんの花とそっくりなものをみつけたよ。かわいい女の子が、かがみの前で長いかみの毛をす

いていた。ブラシっていうんだそうだ」

 その日から、川べりの木は、ブラシの木とよばれるようになったのですって。

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