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くぅばーたんは、朝から機嫌が悪かった。いや、正確に言うと、昨日から、不機嫌。 口をへの地に曲げて、五郎さんが話しかけても返事もしない。 「どうしたの、くーちゃん。何を怒っているの?そんなに恐い顔をしていると、今に角が生え て来るよ」 五郎さんは、上機嫌。 くぅばーたんは、ぷりぷりしながら、答えた。 「角は、結婚した時から生えていました。ただ隠していただけです、角隠しで」 「あれ、くーちゃんは、ウエディングドレスだったでしょう?確か洋装で……」 と、五郎さんが、笑いながら、くぅばーたんの顔をのぞき込んだ。 ところが、くぅばーたんは、鼻で笑っただけ。フンと。 どうご機嫌をとっても、くぅばーたんの機嫌は直りそうも無い。 「洋装の話は、よそう」 と、五郎さんは首を振った。 くぅばーたんは、明らかに、五郎さんに怒っていた。 (何の相談もなしに、突然辞めて!) 五郎さんが、郵便局を辞める事には反対ではないが……。 「人生の大半を過した郵便局よ。そこを、辞める日は……」 くぅばーたんは、最後の日には、お赤飯を炊いて、「ご苦労様でした」と、祝って送り出して あげたいと思っていた。 それは、今日で、昨日じゃない。それを、突然に、一昨日に辞めちゃって! 帰って来た五郎さんを、皆で迎える準備もした。くす玉だって、作ってあったのに! 何もかも台無しにして、くだらないダジャレを言って、へらへら笑っている夫。 「五郎さんなんか、大嫌いよ!」 と、叫んじゃわないように、必死に口のチャックを閉めている。 「仕事を辞めたから、怒ったの?お金なら」 と、五郎さんが言ったものだから、くぅばーたんのチャックは弾けて飛んだ。 「お金の事なんか、結婚してから一度も言った事は無いでしょ?第一、私には、お金なんか必 要ありません。こうみえても、私は、金持ちです。お金なんか、腐るほど有ります。ただ、子ど も達が油断して怠け者になると困るから、贅沢をするのは悪い事だから、生きたお金の使い方を しなさいとお婆ちゃんが教えてくれたから、内緒にしてるだけよ。あたしが欲しいのは、お金 じゃない!」 と、怒鳴ってしまった。 当然、「大志館」は大騒ぎ。 「おばあちゃんが、壊れちゃった!」と。 けれども、だれ一人、くぅばーたんが言った事を信じた者は居ない。 「わたしは、お金持ちなのよ!」を。 |