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タッ君が学校から帰ると、じーちゃんが、庭の手入れをしていた。 「あれっ、じーちゃん、何で家に居るの?」 タッ君が不思議がるのも無理は無い。今日は金曜日、普通の日だ。 普通の日の三時前、じーちゃんは居ないはずだ。 「ははっ、気づかれちゃったか」 タッ君のじーちゃん、五郎さんは、愉快そうに笑った。 「げー、じーちゃん、仕事ずる休みしたのか?ずるいよー」 タッ君は、ランドセルをしょったまま、じーちゃんが手入れをしている、菊の鉢の並んだ南の 庭に入り込んで行った。 「ずる休みとも言えなくないけど……、仕事を辞めたんだよ、昨日で」 と、五郎さんは、ひそひそ声で言った。 「えー、もう郵便局に行かないの?」 タッ君も、つられて小声だ。 「ああ。本当は、今月いっぱい行く予定だったから、明日まで行かなくちゃならないんだけど ね。どうやら、明日の帰りに、お別れの花束をくれるつもりらしいからね。 昨日で辞めたんだよ」 「げっ、なんで?変人じゃん」 「さよならは………、苦手だから………からかな」 五郎さんは、「さよなら」の挨拶がイヤで、突然昨日で仕事を辞めしまったのだ。 職場の皆は、唖然として、目をぱちくり。 辞めたといっても、南桑畑郵便局は、つい目と鼻の先。職場の同僚といっても、甥と姪と、い とこ達で、「さよなら」をいう間柄ではないが。 面と向って、花束をもらって「さようなら」をしたら、やっぱり涙が………。 「じーちゃんが、仕事辞めたの、ばーちゃんは知ってるの?」 と、タッ君は、きいてみた。 じーちゃんの退職は、「大志館」で、少しも話題になっていない。 五郎さんは、首を傾げて考えた。 「そういえば、昨日辞めた事は、知らないかもしれないな。今日も、お弁当のおむすびをこし らえてくれたからね」 「じゃ、おれが、一番?やったー、おれがいちばんかよ!一番始めに、じーちゃんのニュー ス、おれが教えてもらったの?」 タッ君の顔が、ぱっと明るくなった。 「そういえば、そうだね」 五郎さんが、親指を立ててみせた。 「やった!おれが一番だ!」 タッ君は、ピョンピョン跳ねながら、家に入って行った。そして、すぐに、戻って来た。 「カンパイしよう!」 と、リンゴジュースとビールの缶を持って。 タッ君と五郎さんは、植木鉢の間にしゃがみ込んで、二人でカンパイ。 「うーん、このビールは、特別美味い」 五郎さんが、タッ君の頭へ手をやって、髪の毛をもじゃもじゃと撫でた。 タッ君は、へへっと笑った。 |