97話 くぅばーたん64「くぅばーたん失敗の巻き」

 くぅばーたんは、クローゼットの中を眺めて、うーんとため息をついた。

 着て行く洋服を、選んでいる所だ。

 「スーツは、改まり過ぎて、自分の意見が出しにくいかもしれない」

 ベージュのサマーウールのスーツは、除けて………。

 「かといって、ホームウエアーっていうのも、駅前まで行くのに、どうかしらね」

 くぅばーたんは、珍しく、「カケスニュータウン駅」の商店街まで出かける予定だ。

 「元気づけに、赤いポロシャツでは………、ファイトが湧き過ぎて、又喧嘩になるかもしれな

いわね」

 これから、くぅばーたんは、カケス建設の駅前本社に、千兵さんを訪ねて行く予定なのだ。

 「お願い事があって行くんだから……」

 手土産は、茄子の塩漬けと、今朝焼いたばかりのバターケーキ。どちらも千兵さんの好物だ。

 「やっぱり、しおらしく、白いブラースか、無難なグレーのツーピースかしら」

 と………、ここでくぅばーたんは、思い直した。

 「お願いごとっていっても、ただ、弁護士さんを紹介してもらうだけよ。なにも、卑屈になる

事じゃないのよ。それでなくったって、油断ならない相手ですからね」

 くぅばーたんは、この夏一番のお気に入りのグリーンの地に、小花模様のワンピースを選ん

で、それに着替えた。

 共布でこしらえた帽子をかぶると、気分は貴婦人。

 「なにも、暑い中、出かけて行く事も無いかしら。相手は、車で動き回ってるんでしょ。

来てもらいましょう」

 早速、くぅばーたんは、カケス建設に電話。

 「『大志館』の関口ですけど、社長さんはいらっしゃいますか?」と。

 電話口に出て来た千兵さんに、くぅばーたんは言った。

 「ちょっとお願いしたい事があるんだけど、家に来てくれないかしら」

 「へー、やっと、土地を売ってくれる決心がついたのかい」

 と、いう千兵さんの言葉に、

 「だれが、売るもんですか。売るとしても、あんたなんかに売りませんよー」

 ガシャン!

 受話器をおいてしまって、しまったーと、くぅばーたんは思ったけど………。

 「あいつが悪いのよ、いっつも喧嘩を売るような言い方するんだもん。

着替えて損しちゃったわ!」

 くぅばーたんは、プンプンしながら、よそ行きのワンピースを脱いだ。

 だが、用事は、少しも済んでない事に気がついて………。

 (やっちゃった)

 と、ペロンと舌を出して、かたをすくめた。

 失敗失敗、くぅばーたん失敗の巻きだ。