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くぅばーたんは、クローゼットの中を眺めて、うーんとため息をついた。 着て行く洋服を、選んでいる所だ。 「スーツは、改まり過ぎて、自分の意見が出しにくいかもしれない」 ベージュのサマーウールのスーツは、除けて………。 「かといって、ホームウエアーっていうのも、駅前まで行くのに、どうかしらね」 くぅばーたんは、珍しく、「カケスニュータウン駅」の商店街まで出かける予定だ。 「元気づけに、赤いポロシャツでは………、ファイトが湧き過ぎて、又喧嘩になるかもしれな いわね」 これから、くぅばーたんは、カケス建設の駅前本社に、千兵さんを訪ねて行く予定なのだ。 「お願い事があって行くんだから……」 手土産は、茄子の塩漬けと、今朝焼いたばかりのバターケーキ。どちらも千兵さんの好物だ。 「やっぱり、しおらしく、白いブラースか、無難なグレーのツーピースかしら」 と………、ここでくぅばーたんは、思い直した。 「お願いごとっていっても、ただ、弁護士さんを紹介してもらうだけよ。なにも、卑屈になる 事じゃないのよ。それでなくったって、油断ならない相手ですからね」 くぅばーたんは、この夏一番のお気に入りのグリーンの地に、小花模様のワンピースを選ん で、それに着替えた。 共布でこしらえた帽子をかぶると、気分は貴婦人。 「なにも、暑い中、出かけて行く事も無いかしら。相手は、車で動き回ってるんでしょ。 来てもらいましょう」 早速、くぅばーたんは、カケス建設に電話。 「『大志館』の関口ですけど、社長さんはいらっしゃいますか?」と。 電話口に出て来た千兵さんに、くぅばーたんは言った。 「ちょっとお願いしたい事があるんだけど、家に来てくれないかしら」 「へー、やっと、土地を売ってくれる決心がついたのかい」 と、いう千兵さんの言葉に、 「だれが、売るもんですか。売るとしても、あんたなんかに売りませんよー」 ガシャン! 受話器をおいてしまって、しまったーと、くぅばーたんは思ったけど………。 「あいつが悪いのよ、いっつも喧嘩を売るような言い方するんだもん。 着替えて損しちゃったわ!」 くぅばーたんは、プンプンしながら、よそ行きのワンピースを脱いだ。 だが、用事は、少しも済んでない事に気がついて………。 (やっちゃった) と、ペロンと舌を出して、かたをすくめた。 失敗失敗、くぅばーたん失敗の巻きだ。 |