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くぅばーたんは、うーんと背伸びをして、空を見上げた。天高く、馬肥ゆる秋にはほど遠い、 曇天。秋雨前線の影響で、昼過ぎから降り出すという天気予報だ。 「さー、もう一息がんばろうかな」 枝に残っている茄子を摘んでしまおうと、畑に出て来たのだ。 「『秋なすは、嫁に喰わすな』か」 その言葉の意味を、くぅばーたんは知らない。秋の茄子は美味いから、嫁なんぞに喰わせてた まるかという意味だという人もいれば、秋の茄子は、皮が硬いから消化に悪いからだという人も いる。 「そういえば、妊婦さんは、柿も食べてはいけないって、言ってたわね。体を冷やすからっ て」 今ほど医学が発達していなかった昔は、お産は一仕事で、妊婦を気遣う風習があったのだろう と、くぅばーたんは考えた。 「明治時代になって、日本に外国人が入って来るようになって、『日本人は、子どもを大切す る、清潔好きな国民だ』っていったそうだけど、今もそう見えるかしら」 くぅばーたんは、軍手をはめた左手で茄子を掴み、右手のはさみでへたを切っていく。 「子どもって言えば、サラちゃんはどうしたかしらね」 夫の暴力から赤ん坊のサラちゃんを守るために逃げて来た広子さんは、無事離婚が成立して、 その報告をしに故郷へ帰ったきり、連絡が無い。 「あちらで暮らすことにしたのかしら」 と、思いつつ、くぅばーたんは妙な胸騒ぎを覚えている。 「ご両親に『離婚なんて、世間体が悪い。考え直しなさい』とか、『子どもの事を考えて、辛 抱しろ』とか言われていたら………」 広子さんは迷ってしまうだろうと、くぅばーたんは思った。 「大切にしなければならない事は沢山あるが、一人の力には限りがある。何を一番にするか決 めるのが知恵だ」 と、おじいさんが教えてくれ事を、くぅばーたんは思い出している。 「庭の半分を売って、美鈴さんの勤める幼稚園の経営危機を救う事」 「武蔵さんのワイナリィーの権利について、ママと話合うためにアメリカヘ行く事」 「広子さんとサラちゃんの様子を見に行く事」 くぅばーたんには、しなければならない大仕事がある。とりわけ、武蔵さんの問題が。 「茄子をもいでいる時じゃないけど」 ザルに山盛りになった茄子を見ていると、 「これを、どうやって食べようかしらって思うのよね。それが、一番大事な事に思うのよ、あ たしは」 と、考えて、くぅばーたんは、思い出した。 「人の助けを借りるのも、知恵ですよ」と、おばあちゃんが教えてくれた事を。 「そうだ、武蔵さんの事は、弁護士さんに頼もう!茄子は、塩漬けにしよう」 そう決めて、くぅばーたんは、ふふふっと笑った。 |