90話 くぅばーたん58「ストレス解消法」

 「あー、やだやだ!私ったらどっぷり老けちゃって!」

 と、手鏡をのぞきながら悲鳴を上げたのは、麗さん。サーちゃんママだ。

 「そんなことないよ、ママはきれい」

 タッ君が、ゲームから目を離さずに言った。

 「そう言ってくれるのは、君だけよ。マイスイートベビィー」

 麗さんが、抱きしめようとするその手を邪見に払いのけて、

 「お食後、まだ食べてない。デザートプリーズ」

 と、タッ君は、手を出した。

 「デザートは無し。ダイエット中なの」

  麗さんが、ぎゅうとお腹を引っ込めて見せた。

 「だから、しわが増えたんだよ」

 そういったのは、サーちゃん。

 「ダイエットは、老化の元だって」

 「誰が言ったの?おばあちゃん?」

 「それ常識。しっかり食べて、しっかり運動!これ、ダイエットの基本だって」

 タッ君も、ミーティングに参加だ。

 「それに、砂糖が脳の栄養だってよ」

 「風水でも、デザートを食べると運が上がるって言ってた」

 タッ君とサーちゃんは、冷蔵庫にケーキがあるのを知っている。駅前の「金華堂」の。

 「だめだめ、エクレアはあげられない」

 気配を察して、麗さんが冷蔵庫の間に立ちはだかった。

 「エクレア!」

 タッ君とサーちゃんの顔が輝く。

 くぅばーたんが決して作らないお菓子だ。だから、絶対食べたい!と思ったのだ。

 「これは、明日一番で、クライアントに謝りに行くときの手土産なの」

 「誤りに行くの?」

 そう言われると、突撃の足が鈍る。

 「うん。『病院前』駅の目の前のマンションの最上階を買い切った金持ちがね。これが、ケチ

な上にバカ!内装の仕事を受けたんだけど、あれこれ難癖のつけまくり。代金を値切る魂胆は見

え見えなんだけど、泣く子とお客には逆らえなくて……。ストレスよ」

 「ストレスには、甘いもんだってよ」

 と、サーちゃんの甘い誘惑。

 「そうだよね、食べちゃおう、エクレア」

 と、麗さんは、冷蔵庫の戸を開けた。

 タッ君とサーちゃんは、ガッツポーズ。

 エクレアをほおばった、麗さんは話す。

 「その業突く張りのバカがさ、病院の東側のとこ開発して、ニュータウン作るって言うのよ。

どうやら、そこが奴の爺さんの生まれ故郷らしいんだけどね。その爺さんが、千葉の方で不動産

で成功したので、故郷に錦を飾りたくなったって言う話なんだけど。うちの事務所としても、

ニュータウンの内装を任せてもらえれば、有り難いからね。ご機嫌の取りまくり。

あー、ストレスよ」

 そういって、麗さんは、二つ目のエクレアに手を伸ばした。