83話 くぅばーたん55「ナッちゃんのキライなもの」

 ナッちゃんのキライなものは、三つ。

 その一、生野菜と果物その二、虫とうさぎとニワトリその三、ケンカとためいき

 虫がキライなわけは「飛んで来る」だって。

 うさぎとニワトリも、同じ理由。特に、ニワトリは、うらの佐竹さんちのチャボに追いかけら

れてからというもの、あの目を見ただけで足がすくむ。

 虫とうさぎとニワトリがキライなナッちゃんは、虫とうさぎとニワトリが食べる生野菜と果物

もキライになった。

 ナッちゃんのじいちゃん、五郎さんの作る野菜も果物も、農薬を使っていない分、虫が喰う。

虫がついた野菜と果物を見てからは、よけいイヤになった。

 ケンカとため息は、虫とうさぎとニワトリには関係ないが、ケンカを見ると心臓がドキドキす

るし、ため息を聞くと、心臓がきゅっとちぢむ様な気がする。

 そのため息を、このところ毎日、ナッちゃんのお母ちゃん、美鈴さんは、ついている。

 「あーあ、お金が欲しいなー。どっかにお金、落ちてないかしら。だれか、お金、くれないか

なー。あー、はー」と。

 「ボクの貯金、あげるよ」

 と、ナッちゃんが言っても止まらない。

 「それっぽっちじゃ、ダメなの」って。

 そこで、ナッちゃんは、武蔵さんから遺産をもらったくぅばーたんに頼む事にした。

 「ばあちゃん、お母ちゃんにお金あげて」

 「どうして?」

 「お母ちゃん、お金が欲しいんだって」

 そういって、涙を拭いたナッちゃん。

 それを見たくぅばーたんは、赤鬼のように真っ赤な顔をして起こった。

 「美鈴!馬鹿な事いうものじゃありません。お金が欲しいなんて、子どもの前で言って」

 そう言われた美鈴さんは、黙っていない。

 「だってしょうがないでしょ、本当にお金が要るんだもん。お金が無いと、幼稚園潰れちゃう

んだもの。儲け主義のどっかのバカに買収されるのよ」

 と、くぅばーたんと美鈴さんは怒鳴り合い。

 「二人ともよしなさい。ナッちゃんが、こんなに心配てるだろう」

 と、五郎さんが二人をたしなめた。

 美鈴さんの勤めている幼稚園は、良心的な分経営難で、潰れそうなのだ。それで、園長はあち

こち頼んで廻っていて、園長代理の美鈴さんも忙しい。頭が痛い。

 ナッちゃんが、くぅばーたんにもう一度頼んだ。

 「ねー、ばあちゃん、幼稚園のためだって!お母ちゃんに、お金上げて」

 そういわれた、くぅばーたんは、ウンとうなずいた。

 「ナッちゃんの頼みだものね、何とかしたいわね」と。

 「もー何とかなる金額じゃないのよ、お母さん。百万とか二百万のレベルじゃないんだから。

だから、ため息をつくしかなのよ。はーあ」

 美鈴さんは、ため息を連発した。