82話 くぅばーたん54「武蔵さんの遺言」

 下校時間。待ってたわけじゃないけど……、サーちゃんは、裕信君見つけて、駆け寄った。

 「真っ直ぐ帰るの?」

 「いや、学童を廻って帰るよ。うちの親達、今日は遅くなるんだって」

 裕信君は、弟の真一君を迎えに、学童保育室に寄ると言った。

 「あたしも、学童、行こうかな、滝先生にも会いたいし」

 「いいよ。滝先生、居るし」

 サーちゃんは、裕信くんといっしょに、学童へ向った。サーちゃんも裕信君も、去年まで学童

保育に通っていたが、四年生になった今年からは、二人とも学童を辞めた。

 サーちゃんの弟のタッ君は、二年生でも、「お姉ちゃんが居なきゃ嫌だ」と、学童保育を辞め

てしまったが、裕信君の弟の真一君は続けている。

 サーちゃんは、道々、裕信君に話しかけた。

 「お父さんとお母さん、今日は遅いの?」

 「うん。もうすぐ民営化だろ、郵便局。いろいろ大変なんだって」

 「うちのじーちゃんは、郵便局辞めるって」

 「うちの親達は正職員だからいいけど、嘱託とかパートさんとかは、大変だね」

 裕信君は、大人っぽい話し方をするところが、サーちゃんはいい感じだと思っている。

 「昨日の、遺産の話しだけど」

 と、サーちゃんは裕信君を見た。

 「武蔵さんが、大家さんに残した遺産のことか?うちの親達も、すっかり盛り上がって大変

だったぞ。『皆でアメリカ旅行だー』って。大家さんのお金なのにさ」

 「やっぱり、皆で行くのかな?アメリカ」

 昨日のパーティーのメーンイベントは、死んだ武蔵さんが、くぅばーたんの名前で百万円郵便

貯金していたという、発表だった。

 「くーちゃんに、ママに会って来なさいって、武蔵さんが残してくれたんだよ」

 といって、五郎さんが、くぅばーたんに、通帳と印鑑を渡した。

 くぅばーたんのママは、現在、アメリカに住んでいてワイナリィーを経営している。

 くぅばーたんは十二歳のときに別れたきり、ママには会っていない。

 それを、会いに行けという武蔵さんの遺言。

 「行きません、絶対行きません!」

 くぅばーたんは、そう言いはったが………。

 「うちのママも、張り切ってるよ。百万円あれば、皆で行けるって。『曾婆ちゃんも、曾孫達

に会いたがってるわ』って」

 「サーちゃん達が行くのは当たり前だけど、オレんちが行くのは変だろ?変だよ」

 サーちゃんは、首をかしげて、

 「変かな?行くんなら、皆がいいよ。タッ君とナッちゃんとミーちゃんじゃ、つまんいもん。

アメリカって遠いんだよ、飛行機にすんごく長く乗ってんだよ」

 と、サーちゃんに顔をのぞき込まれて、裕信君は、ワクワクして来た。

 「やっぱ、オレんちも行けるかな?」

 「うん。行けるように、作戦立てよよー」

 「大志館」の全員で、アメリカ旅行……?