80話 くぅばーたん53「ウマーウシー、ヒツジのジンギスカン」

 今日は、年に一度の「大風呂の日」で、「大志館」は、大騒ぎ。

 「大志館」の連中は、大人も子どもも、一人残らずお祭り騒ぎが大好きで、

遊び事に「一抜けた」と、知らん顔をする奴は居ない。

 特に今日は、「武蔵さんを偲ぶ会」でもあるので、大いに盛り上がっている。

 昔、「大志館」の住人の共同浴場だった大風呂は、縦7メートル、横3メートルの浴槽が在っ

て、子どもなら泳げる。

 普段は、分厚い板でフタをされて、洗濯場として、天気の悪いときの物干し場として使われて

いる大風呂に、今日は、なみなみとお湯が湧かされている。

  「まだ入らないのよ!」

 という、美鈴さんの静止も聞かないで、水着姿の子ども達は、浴槽で大はしゃぎ。

 玄関前の板の間にはゴザが敷かれて、各家から寄せ集められたちゃぶ台が並べられ、コップや

皿やハシが用意された。もちろん、ワインも。

 今日のメニューは、夏気分の名残の枝豆に冷や奴。そして、秋の味覚の走りの松茸ご飯。

 「松茸とは、大家さん、気前の良い事!随分とおごったね」

 と、野口の父ちゃんが、よだれを拭くまねをした。

 「チチッ!甘い甘い!武蔵さんの教え子の差し入れだよ。

うちのお袋が、そんな金使うわけないだろ」

 と、キーちゃんが、手をヒラヒラさせた。

 「あらあら、あたしはケチでシブチンで、業突く張りの鬼婆ですか?なんなら、皆の部屋代を

値上げしてもらって、気前の良い福の神に変身しても良いんですけどね」

 と、くぅばーたんがにらむ真似をすると、

 「ケチでシブチンで、業突く張りの鬼婆だなんて、一言も言ってませんよ」

 と、野口のお父ちゃんが、頭をかいた。

 そこへ、野口のお母ちゃんが登場。

 「ほらほら、栗おこわも蒸し上がったよ。里芋のきぬかつぎと大学芋もできたし」

 抱えているせいろからは、ウマそうな匂いがプンプンしている。

 キーちゃんが、声をひそめて言った。

 「その栗も、里芋も、サツマイモも、貰い物だったりして」

 くぅばーたんは、キーちゃんを、キッとにらんだ。

 「そんな訳ないでしょ、どれも季節の走りの物よ。まだ、この辺りでは取れません」

 「どうせ買うんなら、刺身とか、生ハムにしてよ。栗とか芋とかじゃなくてさ」

 そこへ、五郎さんが、山のように盛り上げられた梨とブドウを運んで来て、

 「武蔵さんは、ベジタリアンでしょ。刺身も生ハムもまずい。いや、うまいけど……」

 と、言った五郎さんは、

 「ウマー、ウシー、ヒツジのジンギスカン」

 と、踊りながら、続けた。        

 少なくとも、ター君のギャグ、五郎さんには受けたようだ。