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「ばーちゃん、話しがあるんだけど」 と、やって来たのはター君。 「だめですよ。もうすぐご飯でしょ」 くぅばーたんは、薬味のミョウガを刻みながら、顔を上げずに言った。 ター君は、調理台をながめて、 「ばーちゃんちのおかず、何?」 「豚肉。冷しゃぶにしたのよ」 「あー、おれ、肉大好き。ここで晩ご飯食べるよ」 そういいながらも、ター君の手は、お味見の獲物を狙っている。 「あら、おやつをねだりに来たんじゃないの」 そういいながら、くぅばーたんは、茹で上がったばかりの豚肉を一切れ、ター君の口に入れた。 すると、ター君は、 「ウマー、ウシー、ヒツジのジンギスカン」 と、腕を振って踊った。 「なんですか、それは」 「僕の新しいギャグ。受けた?」 「受けません。そんな下らないところばっかり、ジーちゃん譲りで、こまったもんね。ところで、用は何なの。ご飯のおかずを聞きに来たわけじゃないでしょ?」 くぅばーたんは、五郎さんと二人で食べる予定だった冷しゃぶを、三人分に盛りつけた。 「夏にさー、プールやらなかったじゃん」 と、ター君は、デザート用にむいてあっの梨を、ポンと口に放り込んだ。 「プールなら、もう、片付けました」 「ちがうよ、お風呂のプール」 「あら、そういえば………」 ここ「大志館」は、昔、寄宿舎付きの学校だったので、十人は入れるの大風呂がある。 今でこそ、各部屋に風呂場が出来たが、以前は、その風呂を、皆で使っていたのだ。 今でも、子ども達は、時々入りたがる。が、風呂を洗うのが大仕事!それで、夏休みに、一度だけ、お楽しみとして湧かしていたのだが………。 「武蔵さんの入院があったからね」 今年は、すっかり忘れていた。 「やろうよ、プール!オレ楽しみにしてたんだからね」 「そうね、まだ暑いしね。明日やろうか。ご馳走つくって、ワインを開けて!」 と、いって、くぅばーたんは口を押さえた。 「ワインっていえば、武蔵さんのワイン!」 地下室にあるワインの山。武蔵さんの物だ。 カルフォルニアのワイナリーから、配当として毎年送られて来る上物ワイン。 「武蔵さんの親戚が来た時『これは、武蔵さんのです』って、渡すの忘れたわ」 「いいじゃん、もらっちゃえば。爺ちゃん先生も、そう思っているよ」 「そうね、武蔵さんのプレゼントよね」 そうとなれば、ここはやっぱり、勝利のダンスだ。 「ウマー、ウシー、ヒツジのジンギスカン」と。
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