73話 くぅばーたん49のかくらん」

 くぅばーたんが目を開けると、すぐ目の前に、悲しそうなサーちゃんの顔が在った。

 「あれ?五郎さんは?」

 「じいちゃんは、郵便局へ行った」

 サーちゃんは、顔を近づけたまま答えた。

 「やだ、あたしったら、寝坊しちゃって」

 起上がろうとしたが、くぅばーたんは、体が上がらなかった。

 サーちゃんが、大きな声で怒鳴った。

 「パパー、ばあちゃんが、起きた!」

 その声で、ドタドタと正太郎さんが駆け込んで来た。少し遅れて、キーちゃんもやってきた。

 「よかった、母さん、気がついたんだ」

 それはまるで、ひん死の重病人へ向ける言葉だった。

 「何言ってんの、皆して集まって!早くしないと、子ども達、学校に遅れるわよ」

 くぅばーたんがそういうと、ゲラゲラと笑い声が起こった。

 「今は、午後三時だよ。お袋、すっかりやられちまったね」

 そういいながら、キーちゃんが頭の横で、指をクルクルと回した。

 「なんですか、親をバカにして」

 くぅばーたんが、にらむと、

 「この元気なら、すぐに良くなるな」

 と、正太郎さんがサーちゃんの肩を抱いた。

 サーちゃんが、コクンとうなずいて、

 「あたし、遊びに真帆ちゃんちに遊びに行って来る」

 と、立ち上がった。

 「行くとき、郵便局のぞいて、じいちゃんに『ばあちゃんが、目を覚ましたよ』って

いっておいてくれ」

 「うん。ター君や、皆にも言っとくよ」

 そういって、サーちゃんは、スキップで部屋を出て行った。

 「なんでしょ、何事が起こったのか……」

 くぅばーたん一人、きつねにつままれた顔。

 「お母さんは、日曜日の夕方、枝豆をゆでてるとき倒れて」

 「あたし、お湯をこぼしたの?」

 「いや。枝豆はこぼしたけどね。親父が助け起こしてみたら、凄い熱でさ」

 「もうちょっとで、救急車」

 「いや、真っ直ぐあの世行きだったかも」

 一昨々日、武蔵さんの事で、くぅばーたんは腹を立てて、赤鬼のように真っ赤な顔で怒鳴っ

た。が、赤い顔は、そのせいばかりではなかったのだ。

 子ども達の風邪が移ったのか、夏の間の疲れが出たのか、三十八度三分の高熱!

 三日間うなされていたのだ。

 正太郎さんが、くぅばーたんの手を握って、

 「お母さん、暑い中、武蔵さんの看病に毎日通って、疲れていたんだよ」

 と、その手を握りしめた。

 「でも、寝込むなんて、お産の時以来よ」

 くぅばーたんが、イヤイヤと首を振ると、

 「うん。のかくらんだっていってたよ、親父が」

 と、キーちゃんは、に力を入れて、くぅばーたんの顔をのぞき込んだ。