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くぅばーたんが目を開けると、すぐ目の前に、悲しそうなサーちゃんの顔が在った。 「あれ?五郎さんは?」 「じいちゃんは、郵便局へ行った」 サーちゃんは、顔を近づけたまま答えた。 「やだ、あたしったら、寝坊しちゃって」 起上がろうとしたが、くぅばーたんは、体が上がらなかった。 サーちゃんが、大きな声で怒鳴った。 「パパー、ばあちゃんが、起きた!」 その声で、ドタドタと正太郎さんが駆け込んで来た。少し遅れて、キーちゃんもやってきた。 「よかった、母さん、気がついたんだ」 それはまるで、ひん死の重病人へ向ける言葉だった。 「何言ってんの、皆して集まって!早くしないと、子ども達、学校に遅れるわよ」 くぅばーたんがそういうと、ゲラゲラと笑い声が起こった。 「今は、午後三時だよ。お袋、すっかりやられちまったね」 そういいながら、キーちゃんが頭の横で、指をクルクルと回した。 「なんですか、親をバカにして」 くぅばーたんが、にらむと、 「この元気なら、すぐに良くなるな」 と、正太郎さんがサーちゃんの肩を抱いた。 サーちゃんが、コクンとうなずいて、 「あたし、遊びに真帆ちゃんちに遊びに行って来る」 と、立ち上がった。 「行くとき、郵便局のぞいて、じいちゃんに『ばあちゃんが、目を覚ましたよ』って いっておいてくれ」 「うん。ター君や、皆にも言っとくよ」 そういって、サーちゃんは、スキップで部屋を出て行った。 「なんでしょ、何事が起こったのか……」 くぅばーたん一人、きつねにつままれた顔。 「お母さんは、日曜日の夕方、枝豆をゆでてるとき倒れて」 「あたし、お湯をこぼしたの?」 「いや。枝豆はこぼしたけどね。親父が助け起こしてみたら、凄い熱でさ」 「もうちょっとで、救急車」 「いや、真っ直ぐあの世行きだったかも」 一昨々日、武蔵さんの事で、くぅばーたんは腹を立てて、赤鬼のように真っ赤な顔で怒鳴っ た。が、赤い顔は、そのせいばかりではなかったのだ。 子ども達の風邪が移ったのか、夏の間の疲れが出たのか、三十八度三分の高熱! 三日間うなされていたのだ。 正太郎さんが、くぅばーたんの手を握って、 「お母さん、暑い中、武蔵さんの看病に毎日通って、疲れていたんだよ」 と、その手を握りしめた。 「でも、寝込むなんて、お産の時以来よ」 くぅばーたんが、イヤイヤと首を振ると、 「うん。鬼のかくらんだっていってたよ、親父が」 と、キーちゃんは、鬼に力を入れて、くぅばーたんの顔をのぞき込んだ。 |