71 くぅばーたん47「お葬式の話」

 「ねー、ばあちゃん、今日もここで寝てていいでしょ」

 サーちゃんが、まくらを持ってやって来た。

 「いいけど、今日は土曜日で、ママが居るでしょ。自分のベッドで寝てたら?」

 「ママ、出かけるってさ。お葬式だって」

 サーちゃんは、さっさと座敷に上がり込んで、勝手にタオルケットを敷いて横になった。

 「あー、あたしの病気、うつしたらごめんね。年寄りが風邪引くとコロッといくって。

いくっていっても、病院じゃないよ、あの世よ」

 サーちゃんの話は続く。

 「ママのクライアントが、風邪引いてコロッ!あー、ばあちゃん、クライアントってお客さん

のことよ。それで、お葬式だって」

 サーちゃんのママの麗さんは、室内装飾の仕事をしている。

 五郎さんが、首を傾げた。

 「たしか、麗さんは、トモちゃんのとこの仕事をしてたはずだけど……」

 くぅばーたんと五郎さんは、顔を見合わせた。トモちゃんは、二人の同級生だ。

 そこへ、麗さんが顔を出した。

 「ちょっと、出てきますから、子ども達をお願いします。ター君は、野口さんの所です」

 麗さんは、黒ずくめの服装だ。

 「お葬式ですって?」

 「ええ、友丘病院の院長が、昨日、突然」

 「まさか!トモちゃんが死んだの。まだ六十四歳よ。やだー、どうして……」

 「なんで、誰も知らせてくれないんだ。水臭いな。くーちゃんも行くだろう?」

 「そうね、勢ちゃんは知ってるかしら」

 「そうだな、皆に電話してみよう」

 バタバタする二人の様子に、麗さんは、困った顔で言った。

 「あのー、私、先に行きますよ」

 「お寺さんは、どこ?」

 「金泉寺。上野です」

 「上野?何でそんな遠い所で………」

 「ともかく、あたしは行きますから」

 と、麗さんは、飛び出して行った。

 上野と聞いて、くぅばーたんは首を振った。

 ここから上野は、二時間以上かかる。

 皆に連絡した所で、これから支度するんだから、間に合わないかもしれない。

 「きっと、親戚が出しゃばって来て」

 くぅばーたんは、キッと空をにらんだ。

 武蔵さんの時も、親戚がドタドタとやってきて、「葬式の事」や「残された財産」でもめて、

さっさと武蔵さんは骨にされて、遠くの故郷、鹿児島へ連れて行かれてしまった。

 家族同然の「大志館」の皆も、昔の「大志館」の仲間も、武蔵さんの生徒さんも、葬式には出

られなかった。

 「トモちゃんも、親戚達が出しゃばって、そんな友達の居ない所で、お葬式する事になったの

よ、きっと。死んでまで寂しいなんて」

 くぅばーたんは、悔しそうな顔をした。

 「トモちゃんちは、戦争中に疎開してきた家だから、上野が菩提寺かもしれない。

それで、遠いから皆には知らせなかったんだな」

 五郎さんは、そういって、うなずいた。