68話 くぅばーたん44地獄に仏の千兵さん

 「ばーたん、重い?」

 おんぶされた背中で、ミーちゃんが気をつかう。

 「平気。だけど、タクシー捕まえたいね」

 ミーちゃんが、コクンと背中でうなずく。

 「ミーちゃんが、お熱です。直ぐに来て下さい」と、保育園から連絡をもらって、

くぅばーたんは迎えに来たのだ。

 外は雨。台風が近づいているせいか、風も強い。

 タクシーで来るつもりで、カケスタクシーに電話したが、何回電話しても話し中。

 で、仕方が無いから、おぶいひもを抱えて飛んで来たのだ。

 四歳になったミーちゃんは、ずっしりと重い。

背も高くなっているので、くぅばーたんがおぶうと、足が足にぶつかる。

 保育園から、タクシー会社に電話して、やっとつながったが、タクシーはないと言われた。

 「この天気ですからね、タクシーを利用する人が多いんでしょう。困りましたね」

 のぞみ先生が、気の毒がってくれたが、どうにも仕方が無い。雨と風は、強くなる一方だ。

 「ミーちゃん、行くわよ!頑張ろうね」

 くぅばーたんは、ミーちゃんをおぶって、雨の中を歩き出したのだ。

 雨足は一段と強くなって、くぅばーたんの膝から下はぐっしょりと濡れてきた。

のぞみ先生が、ブルーシートでミーちゃんを包んでくれたので、ミーちゃんが濡れる心配が無い

のが救いだが、歩きにくい事に変わりはない。

 「ミーちゃん、冷たくない?」

 「大丈夫。ばーたん、冷たくない?」

 「平気よ、いっしょに頑張ろうね」

 と、言った時!

 強い風にあおられて、傘がおちょこになって、壊れてしまった。

 弱り目に祟り目。泣きっ面に蜂。

 だけど、こんな事にくじけるくぅばーたんではない。

 「ミーちゃん、大丈夫だからね」

 とはいったものの、どうしたらいいか・・・。

 その時、一台の車がスーと寄って来て、停まった。

見ると、くぅばーたんの幼馴染みのカケス建設の社長の千兵の車だった。

 「大変だね、どこいくの?乗りなよ」

 くぅばーたんは、子どもの頃から千兵が嫌いだ。天敵と言ってもいい仲だ。

だけども今日ばかりは、背に腹は代えられない。すかさず、車に乗り込み、ホッと一息。

 「さしずめ、おれは、地獄に仏だろ」

 と、千兵が、バックミラー越しにくぅばーたんに笑いかけた。

 「ほんと、天の助。千ちゃんがいっしょで鬼に金棒よ」

 「おれが金棒で、くーちゃんが鬼か?」

 千兵の顔が、嬉しそうに輝いている。

 「ええ、私が鬼」

 といった、くぅばーたんの目が、キラリ。

 なにしろ、これからくぅばーたんは、ミーちゃんを病院に連れて行かなければならない。 

 でも、その前に、ター君と真一君も、学校へ迎えに行く予定だ。二人も発熱したので。

 もちろん、このまま、千兵の車で廻る魂胆だ。

 「本当に大助かりよ、仏の千兵さん」