屁こき長者

  昔々、山の中の小さな村に、五作というい百姓がおったとさ。

 百姓といっても、田んぼも畑も持っていなかった五作は、他所の家に手伝いに行くだけで。

 五作は、貧乏どん底どん詰まり。

 食べる物もろくになくて、空きっ腹を抱えて歩き回り、野の草や木の根まで食べていた。

 腹いっぱい食べる事の出来ない五作は、痩せて力も弱く、手伝い仕事も、減る一方。

 

 そんな時。

 村一番の金持ちの長者どんの家に婿殿が来る事になって、盛大な婚礼の宴が開かれた。

 村人全員ご招待の、飲み放題、食い放題の大宴会。

 もちろん五作も喜び勇んで出かけて行って、ご馳走を食べて、食べて食べて食べまくったさ。

 「うへー、おら、シアワセ!」

 と、五作が喜んだのもつかの間!

 普段食べ慣れない天ぷらだの鯉こくだのを、たらふく食べたものだから、腹の虫がびくり仰天、腸ねん転、

ピーピーグルグルの腹下しで、便所のそばを離れられなくなってしまった。

 昔の事だから、便所は家の外の暗い所に有ったもんで、五作は、便所の脇の薄暗がりにしゃがみこんで

しくしく痛む腹をいたわっていた。

 

 と・・・、長者どんの婿殿がやって来て、便所にしゃがみこみながら、独り言。

 便所にはいると、気が緩むのは今も昔も変りは無く、何となく独り言を言ったりする。

 「まんまとこの家に、婿に入り込んでやったぞ。ひひひっ!

 みんなが油断した頃、大雲のお頭にお知らせして・・・。  

 蔵のお宝をごっそり盗んでトンズラだ。グヒヒッ!」

 それをきいた五作はびっくり。

 「大雲といやー、この辺り一帯を荒らし回っている大泥棒の大将だ。

これは大変、一大事!長者どんに知らせよう」

 

 痛む腹をおさえて、いちもくさに駆け出して、長者どんに報告だ。

 「その婿殿は、盗っ人だ!」

 と、いきんだところで、ブッ!臭い屁が一発出て・・。続けて、ブリブリブリと三連発。

それを聞いた、長者どんも、皆の衆も、腹を抱えて大笑い。ばか笑い。

 婿殿も、声を上げて高笑い。

 ところがところが、夜が明けて、ビックリ!

 長者どんの家の蔵は、スッからカランの空っぽで、婿殿の姿も消えていた。

 「ああ、五作の言うことを信じていれば」

 と、思ってみても、後悔先に立たず、後の祭り。名代の長者も、今では唯の人。

 

  それにひきかえ、五作は、「屁たれの占い師」と祭り上げられた。

 近隣近在から、お客が押しかけて、お礼がたんまり、お布施がザクザク。

 今では金持ち、屁たれの長者!       

 ああ、あやかりたい、あやかりたい!

 屁こき長者 それから

 昔々、山の中の小さな村に、五作という男がおったとさ。

 貧乏人の水飲み百姓だった五作が、ひょんなことから、長者どんの家の婚礼の晩、

 「婿殿は、盗っ人だ!」

 と、言い当てて!

 それも、臭い屁をこきながら言い当てて! 

 五作は、屁たれの占い師と、評判を取った。

 とはいうものの……、五作は、ただの百姓。

 占いも出来なきゃ、祈祷も出来ない。

 千里眼でも無ければ、超能力もない。

 「五作様、我が家の運を見て下さい」

 と、金を積まれた所で、分からないものは分からない。

 が……、金は欲しいし……。

 (えぃっ!ばれたらばれた時の事!)

 口からでまかせの占いを臭い屁と共に、ぶちかます。

 

 でまかせといっても、あちらこちらと手伝い仕事をしていたのが幸いして、良く当たる。

 「うちの息子の清一に嫁を取りたいんですが……、どこの娘がよいやら……」

 と、下の庄屋がやってくれば、

 「ブホッ!、下働きの富子が良かろう」

 と、屁と共に一発。

 実は、五作は、田植えの手伝いに下の庄屋の所に行った時、清一と富子が、

手を取り合って頬を染めていたのを見ていたからね。

 好き合っていた清一と富子は晴れて夫婦になれたのだ。力会わせて、精出して働いたさ。

 家は栄える、庄屋は満足。五作は、お礼をたんまり。うっほぉほっ!

 また、ある時は、町の越後屋がやってきて、

 「うちのジィー様が、金蔵のカギを隠してしまって、その隠し場所を忘れて困っています」

 「裏の竹やぶを探すべし。ブブッ!」

 五作の一言で、急いで竹やぶを探すと、出て来た出て来たカギの束。

 五作は、すす払いの手伝いに行った時、越後屋のご隠居が、竹薮をうろついていたのを思い出したというわけで。

 評判が評判をよび、お礼がたんまり、お布施がたんまり、今では五作は屁こき長者。

 ところが根は小心者の五作の事。いつ正体がばれるかとはらはらドキドキ。

 飯も咽を通らずに、酒ばかり飲んでいた。

 飯を食わなきゃ屁も出ない。出るのひゃっくりおクビだけ。

 そのくせ、負け犬の遠吠えで怒鳴りまくる。

 「ヒック!おれはなんでもお見通しだぞ!皆の秘密、ばらしてやろうか?グヒッ!」

 すねに傷持つ奴は、もちろんの事。やましい所の無い人までが、ビクビク暮す。

 「そんな事は言わんで……、穏便に」

 「いや、秘密をばらされたく無い奴は、金を持ってこい」

 と、聞く耳持たずに、威張り散らす有り様。

 そこで、皆は考えて……。

 五作の家の前で尻まくり、ケツまくり。

 皆でいっせいに屁をかます。

 ブホッ、バホッ、ブリブリ、ブブー!

 屁の大合奏に、天地も揺れて、五作は家ごと吹き飛ばされ、空の彼方に跳んでった。

 皆は、こおどり、大喜び。

 「さすがは、屁こきの長者どの。屁の言うことは、よく分かる」とね。

 こんな話しが、有ったとか、無かったとか。

 

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