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(やべー、遅くなっちまたぜ) 裕信は、急ぎ足で信号を渡った。 (田代んちに、寄り道したから) ついゲームに夢中になりすぎて、気がついたら五時半。 裕信の両親は、今日は組合の集まりで、帰りが遅くなる。 それで、学童館へ、弟の真一を迎えに行くように頼まれていたのだ。 学童館の玄関口で、真一はしびれを切らして、待っていた。 「兄ちゃん、遅いよー」 「ごめん、ごめん。ちょっとな」 裕信は、照れ隠しに頭をかいてみせた。 「兄ちゃんのばか。サーちゃんばあちゃんに、頼まれただろ」 真一が、怒った顔で、ずんずん先を歩いた。 「頼まれたって………、そうだよ、いっとうヤバいよ!」 今朝、学校に行く時。くぅばーたんに、裕信は頼まれたのだ。 「今日の夕方、谷さんの個展のオープニングパーティーが有ってね、皆で行くから。 「大志館」には、裕信君と信ちゃんと、広子さんとサラちゃんだけになるわ。 まさかと思うけど、サラちゃんのお父さんが、サラちゃんを連れ戻しに来るかもしれない。 その時は、裕信君、サラちゃんを守ってあげてね。その時は、直ぐに警察に連絡してよ」って。 サラちゃんのお父さんは、赤ん坊を殴る極悪人だ。 そいつから、サラちゃんを守る役目を、裕信は頼まれたのだ。 午前中一杯、そいつをやっつける事で、裕信の頭は一杯だった。
先ず第一の作戦。学校から帰ったら、急いで玄関のドアを閉める。カギもかける。「大志館」 のドアはたいがい開けっ放しなんだ。 第二の作戦は、サラちゃん親子を、裕信達の家に隠す。夕ご飯は、裕信達の分をあげる。かー ちゃんが『カレーを作っておくからね。真一と二人で食べてよ』って言ってた。それをあげて、 自分たちはカップ麺を食べる。これ、好物。 第三は、替え玉作戦。真一に、サラちゃんの帽子をかぶせて、タオルでくるんで、バギーに乗 せておく。後ろ向きなら、きっとごまかせる。サラちゃんと思わせて、さらわせる。 第四の作戦は、まだ考え中だったのに、給食の時、唐揚げのお代わりでクラスがもめて、ワイ ワイガヤガヤやったら、忘れちゃった。 裕信は、寄り道した事を、後悔していた。 だから、八つ当たりで、 「おい、急いで歩けよ。グズだな」 先を歩いている真一の背中を押した。 真一は、駆け出した。 「まてよ、どうしたんだよ」 裕信が、あとを追う。 信号のところで追いついた裕信に、真一が涙の溜まった顔を向けた。 「サラが、連れてかれたら、どうすんだよ。兄ちゃんのせいだからね」 「お前……、一日中、心配してたのか?」 真一は、こくんとうなずいて、裕信にすがりついた。 |