56話 くぅばーたん34「大雨、大風」

 今日は大雨。バシャバシャと、大粒の雨が地面を叩く。その上、風もビュンビュン。

 くぅばーたんは、この雨風で、梅の実が落ちてしまうのではないかと心配だ。杏の実も。

 「ジャムが作れなくなるわ。それより、もっと心配なのは・・・」

 くぅばーたんが、心を痛めているのは、大平さんの農園を思ってだ。

 丹誠こめて作っても、雨風、嵐で一瞬のうちに、その成果が吹き飛んでしまう。

 太平さんの農園だけでない。佐多さんの畑だって、山谷さんの田んぼだって、心配。

 「この風じゃ、海も荒れるでしょうね。太郎浜の与根さん、漁に出られるかしら」

 心がかりは広がって、遠く、アフリカの地を思う。

 「雨が降らないで困っている国や、日照りで苦しんでいる人たちに、この雨を運んであげられ

ると良いのにね」

 それにしても、強い風だ。

 くぅばーたんは、二階のバルコニーの手すりが気になって、バルコニーをのぞいた。

 「ああら、大変!折れちゃってる」

 もっと早くに、直しておくべきだったと思いながら、空を見上げた。雨、雨、雨!

 くぅばーたんは、大工の棟梁の病院にお見舞いに行きがてら、手すりの修理やら、何やらの仕

事を頼みたいのだ。

 (思い立ったが吉日っていうでしょ)

 こう思うと、実行せずにはいられないくぅばーたんで、うろうろと廊下を歩き回る。

 「大家さん、どうかしたんですか?」

 広子さんが、不思議そうに声をかけた。

 くぅばーたんは、今直ぐに、隣町の日赤病院へお見舞いに行きたい訳を説明した。

 「でも、どしゃぶりで、困っているの」と。

 「車で行きましょう。あたしが、運転しますから。旦那さんの車、空いてますよね」

 広子さんの声の力強い事!

 「それは、大助かりよ。お見舞いには……、ピクニックのために作ったブラウニーが残ってい

るから、あれをラピングして!我ながら、美味しくできたもの、喜んでくれるわ」

 屋根裏から出して来たチャイルドシートにサラちゃんを乗せて、三人で病院へ向った。

 棟梁の病室を訪ねると、先客が居た。

 「うちの旦那の師匠の息子さん。わざわざ、千葉から来てくれたんですよ」

 棟梁の奥さんが、先客の若い男を紹介した。

 その人は、しげしげとくぅばーたんの後ろに控えていた広子さんとサラちゃんを見て、

 「もしかして、テツ兄イーの奥さん?」

 と、いった。

 ひろこさんは、息をのんで、固まった。

 「だって、その子、サラでしょうが?テツ兄イーの娘の。兄イー、心配して……」

 広子さんは、イヤイヤと首を振るばかり。

   

 くぅばーたんは、男を睨みつけて、

 「いいえ、ここ人は海野広子さんで、

 娘はさくらちゃん。

 うちの息子の婚約者です!」

 と、静かに、しかしきっぱりと言った。