53 くぅばーたん31「楽あれば苦有り」

 くぅばーたんは、腕組みをして、首をひねって、「うーん」とうなった。

 それから、もう一度、玄関に出て、廊下を巡って、階段を上って、二階へ行った。

 これで、三回目だ。

 大きなカメラマンバックをさげて、仕事に出て行くところの谷さんが、

 「どうかしたんですか、大家さん。家の中をうろうろ歩き回って、折の中の熊ですね」

 と、くぅばーたんの肩を叩いた。

 「どこか、修理したいんだけど……」

 くぅばーたんが、又、首をひねった。

 谷さんは、驚いた顔でくぅばーたんを見た。

 「大家さん、大工仕事もするんですか?」

 「いいえ、大工の棟梁にね、仕事を頼みたいんだけど、頼む仕事が見つからないの」

 「それなら、バルコニーの手すりを直して下さい。バルコニーへのドアが『開放厳禁』じゃ、

暑くてたまりませんから」

 「それは、もう頼んであるのよ、大工の棟梁にね。お代もお支払いしてあって……」

 「よかった!じゃ、間もなく直るんですね。大家さんに金がなくて直せないって聞いて」

 「だれ、そんなこといったの」

 谷さんは、首をすくめると「行ってきます」と、あわてて階段を駆け下りて行った。

 「きっとキーちゃんね、そんなこと言いふらしたのは!」

 キーちゃんを捕まえて、問い正したいが、今日は五郎さんと一緒に、子ども達をつりに連れて

行って留守だ。

 くぅばーたんは、「開放厳禁」という札の下がったドアを開けて、バルコニーへ出た。

 大工の棟梁は怪我をして休業中だが、「直ってからで良いから」と、くぅばーたんはここの修

理を頼んで、お金も渡した。

 「お金は、良いの。お金の問題じゃ無い」             

 谷さんも言ってたように、バルコニーの修理は急いでやってもらいたい。

棟梁の知り合いの大工さんに頼んで、すぐにでも来てもらいたい。

でも、そうなると、棟梁に払ったお金を、返してもらう事になる。                     

 (それはだめなの、それじゃ、あたしのお見舞いの気持ちが無駄になるもの)

 くぅばーたんは、急いで直さなくてもいい仕事を見つけて、棟梁に頼もうと悩んでいる。

 「お母さん、ちょっとサラを見てて」

 階段の下から、美鈴さんが声をかけて来た。

 くぅばーたんは、サラちゃんを抱いて外に出た。ぶらぶらと散歩をする。

 「あのママさん三人は、何をしてるんでしょうねー。秘密の部屋で、秘密のお話?」

 その時、ピピッとくぅばーたんに閃いたのは!

  「そうよ、あの部屋の壁、あの絵を剥がしましょ。あれは、あたしの宝物ですもの。

 壁じゃなくて、絵として保管しましょう」

 秘密の隠し部屋が小部屋でも、壁一面の絵だ。どこに置くのか?でも………。

 「とりあえず、バルコニーは直せるわ」

 多くを悩まないくぅばーたんだ。