52 くぅばーたん30「ピクニックは、お楽しみ」

 きょうは、「大志館」のピクニック。

 くぅばーたんと五郎さん。正太郎さんと麗さんと、サーちゃんとター君。

 美鈴さんと一也さんと、ナッちゃんとキーちゃん。それに、谷さんの十一人で出発だ。

 「あれっ、お母さん、お兄ちゃんは?」

 「正太郎なら、居るでしょう」

 「ちがう、キーちゃんよ」

 美鈴さんは、下のお兄さん、キーちゃんが居ない事を、気にしていたのだ。

 「呼びに行ったけど、居ないのよ」

 「仕事で、泊まりなんじゃないのか。連絡ぐらいくれるといいのにな」

 くぅばーたんと五郎さんが、困ったもんだと顔を見合わせた。

 「まったく幾多郎は、気ままなやつだ。いくら一人暮らしでも、困ったやつだ」

 と、正太郎さんがいったので、

 「パパ、困ったやつって、だれ?」

 と、ター君が、わざと大きな声で正太郎さんにきいた。

 「キーちゃんだよ」

 サーちゃんが、小声でター君に教えると、ター君いばって、

 「そのぐらい知ってるよ」だって。

 「キーちゃんじゃなくて、『おじさんっていいなさい』っていってるでしょ」

 そういって、麗さんが、サーちゃんを肘でつついた。サーちゃんが、肩をすくめた。

 その時、ご馳走の入ったバスケットを運んでいた谷さんが、大きな声を出した。

 「すげー上手そうな匂い!くぅー楽しみ!」

 「どれどれ、かがせて」

 サーちゃんとター君が、かけよった。

 「これは、ソーセージパンと鳥の唐揚げの匂いだよ。ナッちゃんもここへ来て、かいでみな」

 サーちゃんが、ナッちゃんを手招きした。ナッちゃんも、駆け寄ってにっこり。

 「のりの匂いもするよ」

 「太巻き寿司も作りましたよ。ナッちゃん、エビと卵焼きの入った太巻き、大好きでしょ」

 と、くぅばーたんが嬉しそうに言った。

 「あたしの好きな物は?」

 そういって、キーちゃんがくぅばーたんを見上げた。

 「イチゴにバナナにオレンジでしょ、はいはい、入れましたよ。それからこれ」

 くぅばーたんは、キーちゃんに、クッキーの入った缶を渡した。

 ター君、うらやましそうに、キーちゃんを見ている。

 「それはそうと、新入りのあの親子は?広子さんとサラは、どうしたの」

 と、美鈴さんが、麗さんの顔を見た。

 麗さんが、肩をすくめて、

 「サラがいるから、遠慮しますって」

 と、答えた。

 広子さんの名をきいて、キーちゃんが、美鈴さんのジーパンにしがみついた。

 「もっと、熱心に誘わなくちゃ!広子さん、気兼ねしてるのよ。あたしが連れてくるわ」

 美鈴さんが、キーちゃんの手を引いて、廊下の奥に向った。

 キーちゃんは、イヤだとしゃがみこんだ。が、美鈴さんは、

 「キーちゃんがお迎えに行かないと、サラちゃんは来れないのよ。サラちゃんもいしょがいい

でしょ?ピクニックは、みんな一緒が楽しいよ」

 と、キーちゃんの手を、ぐいっと引っ張った。

 「キーちゃん、行ってあげな。『サラちゃん行こう!』って、誘ってあげな」

 と、一也さんが、キーちゃんを抱き起こして、ナッちゃんが、

 「お兄ちゃんも一緒に行ってあげるからね」

 と、キーちゃんの顔をのぞき込んだ。

 「大志館」のピクニック、十三人で出発だ!

 懸巣山公園の原っぱに着いてみると、

 「おーい、みんなー、ここだよー。ここだよっ!」

 と、キーちゃんが、大きな声で叫びながら、手を振って皆を迎えた。

 「良い場所、取っておいたからねー」って。