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「サラ、お願いだから、静かにして」 広子さんは、ぐずる赤ん坊を抱いて、泣き出しそうな顔で部屋を歩き回る。 「ちょっと、いいかしら」 そういいながら、部屋に入って来たのは、麗さん。サーちゃんのママだ。 広子さんは、ぺこぺこ頭を下げて、謝る。 「すいません、うるさくして。すぐに、静かにさせますから」 と、涙声。 「えっ、これがうるさいの?子どものうるさいのって、こんなもんじゃないでしょ」 そこへ、ミーちゃんの母ちゃん、美鈴さんもやってきた。 「スズちゃん、この子、うるさい?」 さっそく麗さんが、美鈴さんに聞く。 「おたくの二人の子どもの喧嘩に比べれば、雨の夜の墓場のように、静まり返ってる」 それを聞いて、広子さんが、ぺこり。 「ありがとうございます。本当にありがとう」 その声は、振るえていた。 「気を使って言ったんじゃないのよ、本心よ。子どもがぐずるのは普通の事。 泣いて、叫んで、意思表示をして当たり前なのよ」 美鈴さんは、幼稚園の先生らしく、教える。 それから、麗さんと、顔を見合わせて、(こんなことでも、殴られたんだねー)と、 こくこくと頷き合った。 「ところで、広子さん、ワイン飲まない?」 「いえ、あたしは………」 麗さんは、ワインを一本とコップを三つ持って来ていた。 「ワインなんて、ジュースみたいなものよ。ぐーとやって」 遠慮する広子さんに、グラスを持たせる。 「か弱き女達のために、カンパーイ」 三人で、ワインで乾杯だ。 「あたしたちが、ここへきたのは、あなたの力になろうと思って」 「広子さん、あなた何か、特技は無いの?車の運転免許、持ってる?」 美鈴さんと麗さんは、ワインをお代わり。 「はい。車とバイクの免許が有ります」 と、広子さんが、ワインを飲み干す。 「あら、いける口じゃん。ヨロシクね」 麗さんが、ワインを注ぎ足す。 「お仕事は、何かしてた?」 「はい、病院に………」 「看護婦さん?」 「今は、看護士って言うの」 美鈴さんと麗さんの会話が弾む。 「いいえ、介護士です。老人病院の」 「へー、大変な仕事じゃん。えらいね」 麗さんが、そういって肩をすくめた。 美鈴さんが、あきれ顔で、広子さんを見た。 「自立出来る能力が有って、なんで、夫の暴力を許したの、がまんしたのっ!」 広子さんが、小さな声で謝った。 「すいません。あたし、淋しいのが辛くて、つい………。あの人、いいところも有るって、 思ってしまって。でも、サラを……」 「ああ、さくらちゃん、名前変えたんですって。サラか、いいじゃん」 麗さんと美鈴さんは、又、乾杯! サラは、眠りはじめた。安らかな寝息をたてて。 |