5話 置き土産

 二人の息子がおとなになって、Kさんはほっと一息。

 だんなさんが、となり町に働きに行っているのは淋しいけど……土、日には家に帰ってきます。

「さあ、これからが私の青春よ」

 家族の世話に追われていたKさんには、時間が出来たらやってみたい事が、いっぱい。

 ガーデニングに、油絵に、ギターに、社交ダンス。温泉めぐりもしたい。

 「どれからからはじめようかな、うふふ」

 ワクワク張切っていたKさんのところに、大きな荷物が届きました。

 Kさんの背丈ほどの大きな石。しかも、泥だらけ!

 この間死んだ伯母さんの置き土産ですって。

 返そうにも、伯母さんは死んじゃったし、捨てようにも大きすぎて無理。

 「いやねー、こんな物要らないわよ」

 しょうがないので、Kさんは玄関の脇に放って置く事にしました。

 が………、いくら何でも汚すぎます。

 いやいやながら、Kさんは、水をかけてゴシゴシと、その石を洗いました。

 そうしたら、どうでしょう!石は、虹を映したように七色に輝いたんです。

 その美しい事!

 たちまち近所の評判になり、皆が見に来ました。遠くからもやって来ちゃって。

 一日中、人が集まり、庭の中を覗き込むんです。Kさんは落ち着きません。

 おまけに、その石は、朝晩磨いてやらないと、輝きを失います。

 Kさんは、趣味どころでは有りません。石の手入れに追われっぱなし。

 人が覗き込むんです、庭も家もきれいにしなくてはならないし………。

 「変な物残してくれちゃって!とんだ置き土産ねっ」

 と、腹を立てても、仕方のない事。

 週末に帰ってくるだんなさんに、ぐちぐちと愚痴るしか仕方がなくてさ。

 内心はイライラしていましたが、見物に来る人には笑顔を見せなければ失礼だし……。

 Kさんの心は、不満で爆発しそうでした。

 それが、ある日。

 突然、ポン!

 はじけたのは、あの大きな石。

 石が、ポロポロッと砕けて………。その一片一片が、様々な色に輝き、まるで宝石のようでした。

 Kさんは、そのかけらをていねいに磨いて、ペンダントを作りました。

 虹色に輝くペンダント。

 一目見たら、だれでも欲しくなる美しさ。

 今や、Kさんのペンダントは注目の的です。

 「うふふ!ペンダント作り、楽しいな!」ですって。

 良かったですね、Kさん。

 

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