45 くぅばーたん23新住人のベビィー服

 「ねえ、ちょっと変だと思わない、お義母さんが連れて来た人」

 麗さんが、声をひそめて、正太郎さんに言った。

 「そうか?どこが?」

 正太郎さんは、あまり興味が無さそう。

 サーちゃんは興味津々。どんな会話も聞き逃さないぞと、聞き耳を立てる。

 ター君は、テレビに夢中だ。

 麗さんは、手を振り回しながら、

 「どこがですって。どこもかしこも怪しいのよ。名前からして、怪しい」ですって。

 正太郎さんは、首を傾げた。

 「なんだっけ?、名前?」

 「海野広子でしょっ!」

 「ほー、それは、出来過ぎだな。海で会った海野さん?。海は広いの広子さん?」

 とつぜん、ター君が歌いだした。

 「?海は広いな、大きいなー」と。

 ター君も聞いていたんだ、この話。

 麗さんは、ますます張り切る。

 「赤ちゃんは、サクラですって」

 「地名の佐倉か?会ったのが佐倉の海だったのか?」

 正太郎さんも、気合いが入って来たのか。

 麗さんが、フンと鼻を鳴らして言った。

 「言うんだったら、桜貝のサクラでしょ。佐倉の海野サクラは無いでしょ」と。

 正太郎さんが、ポンと手を打って、決めた。 

 「よし、決まりだ。名前は、偽名だな」

 サーちゃんが、小さな声で言った。

 「なんで、あの赤ん坊が桜貝よ、サクラよ。ぎーぎー泣いてるだけなのに」

 麗さんのテンションは上がる一方。

 「海で拾ったって?何で海にいたのよ、暴力夫から逃れて、海に行く?

隠れるんなら、山でしょ。富士山の樹海とか」

 「確かに。海は、見通しがよすぎる」

 そこに、ター君が一言。

 「海岸で座ってると、満ち潮に成った時、溺れちゃうよ。朝は、引き潮だけどね」

 ター君は、海辺の生物の図鑑が大好きだから、海辺に詳しい。

 サーちゃんも、思わず参加。

 「死ぬつもりだったんだ、あの人!」

 その言葉に、麗さんは、想像を巡らす。

 「死ぬつもりで海に来て………、怖くなってしゃがみ込んでいるうちに眠ってしまった。乳飲み子を抱えて………、かわいそうに」 

 今度は麗さん、涙ぐんでしまった。

 正太郎さんが、鼻にしわを寄せて、?の顔。

 「話が、違って来てないか?あの親子は、怪しいんだろ?

 それが、そんなに簡単に、かわいそうになってしまっては………」

 とつぜん、サーちゃんが叫んだ。

 「ママのバカ!あたしのお気に入りのピンクのドレス、あげちゃって」

 「だって、着るものが無くて困ってるようだったから。いくら気に入ってたって、

沙織には、あのドレス、きついでしょが」

 「それはそうだ、十歳と十ヶ月とじゃ大違い。ケチな事言うな」

 パパとママに叱られちゃったサーちゃん。

 (あんな子………、なぜ来たの?)