43話 くぅばーたん21新住人登場!

 くぅばーたんは、むっくり起き上がると、隣に寝ている五郎さんを揺り起こして言った。

 「海が呼んでる!あたし、海を見て来るわ。潮干狩りよ!」

 眠い眼をこすりながら、五郎さんが時計を見てみると、時刻は4時48分。

 「くーちゃん、夢でも見てるんじゃ……」

 と言って、五郎さんは、布団に潜り込んだ。

 くぅばーたんは、さっさと服を着替えて、炊飯器のスイッチを入れて、

顔を洗って身支度を始めた。そして、炊きあがったご飯で、おむすびを七個作る。

 三個は五郎さんの分、四個は自分の分。

 (千葉は遠いんですもの、お腹がすくわ)

 それから、くぅばーたんは、バナナを一本リュックに入れて………。

 (小腹が空いた時のおやつ)

 魔法瓶には、沸き立てのアツアツの麦茶。

 (海には熱い麦茶がよく似合う)

 そして、折りたたみの傘とレインコートと持って、家を出た。

 (雨具は、遠足の必需品。海の天候は、変わりやすいかもしれないから)

 くぅばーたんは、何回か電車を乗り換えて、バスに乗って、千葉へ。

 昔、「大志館」に住んでいた安平さんの家を訪ねて潮干狩り。

 それが、くぅばーたんの春の恒例行事。だが・・・。

 お目当ての安平さんの家が無い!

 (あらあら、お引っ越ししちゃたの?)

 でも、春の海は、変わらずに待っていてくれた。

 目の前に広がる太平洋!

 どこまでも続く海岸線!

 「あー!気持ちがいいわー!やっぱり来てよかった。一人旅も、楽しいものね」

 そう独り笑いをして、海岸をぶらりと散歩。

 少し行くと、山のように大きな岩が有った。その岩陰に、人の気配。

 のぞいてみると、岩陰に親子がうずくまっていて………、

 くぅばーたんを見て、おびえたように体を固くした。

 「どうかなさったの?」

 くぅばーたんは、ニッコリ笑って声をかけた。

 その言い方に心を許したのだろうか、生後半年程の赤ん坊を抱えた母親は、ぽろぽろ涙を流し

ながら、くぅばーたんに訴えた。

 夫が、乱暴は働く事。自分だけでなく、子供にも手を上げるので逃げ出して来た事。

見つかったら、大変なことになると。

 くぅばーたんは、話を聞いて、何度もうなずいた。そして言った。

 「大丈夫よ、私が助けてあげる。私を信じてちょうだい」

 岩陰で夜を明かしたのだろう、母親も赤ん坊もすっかり冷えきっていた。

 くぅばーたんは、持って来たレインコートで二人をくるみ、暖かい麦茶を飲ませ、

母親にはおむすびを、赤ん坊にはバナナを食べさせて、それから、二人を連れて、歩き出した。

 持って来た傘で、顔を隠しながら。

 くぅばーたんの胸は、ドキドキ震えていた。暴力男が来たらどうしようかと思う気持ちと、

ドラマチックな出来事に、自分が関わっているという喜びで。

 (ともかく「大志館」へ連れていきましょう。あそこなら、安心だもの)

 親子を連れたくぅばーたんは、来た時よりも遠回りをして、沢山乗り換えて、

少し道に迷いながら、「大志館」に帰り着いたのは夜。

 くぅばーたんが、突然、海が見たくなったのは………?

 「ふふふっ、不思議ね」

 そんな不思議なご縁で………、新住人登場!