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くぅばーたんは、むっくり起き上がると、隣に寝ている五郎さんを揺り起こして言った。 「海が呼んでる!あたし、海を見て来るわ。潮干狩りよ!」 眠い眼をこすりながら、五郎さんが時計を見てみると、時刻は4時48分。 「くーちゃん、夢でも見てるんじゃ……」 と言って、五郎さんは、布団に潜り込んだ。 くぅばーたんは、さっさと服を着替えて、炊飯器のスイッチを入れて、 顔を洗って身支度を始めた。そして、炊きあがったご飯で、おむすびを七個作る。 三個は五郎さんの分、四個は自分の分。 (千葉は遠いんですもの、お腹がすくわ) それから、くぅばーたんは、バナナを一本リュックに入れて………。 (小腹が空いた時のおやつ) 魔法瓶には、沸き立てのアツアツの麦茶。 (海には熱い麦茶がよく似合う) そして、折りたたみの傘とレインコートと持って、家を出た。 (雨具は、遠足の必需品。海の天候は、変わりやすいかもしれないから) くぅばーたんは、何回か電車を乗り換えて、バスに乗って、千葉へ。 昔、「大志館」に住んでいた安平さんの家を訪ねて潮干狩り。 それが、くぅばーたんの春の恒例行事。だが・・・。 お目当ての安平さんの家が無い! (あらあら、お引っ越ししちゃたの?) でも、春の海は、変わらずに待っていてくれた。
そう独り笑いをして、海岸をぶらりと散歩。 少し行くと、山のように大きな岩が有った。その岩陰に、人の気配。 のぞいてみると、岩陰に親子がうずくまっていて………、 くぅばーたんを見て、おびえたように体を固くした。 「どうかなさったの?」 くぅばーたんは、ニッコリ笑って声をかけた。 その言い方に心を許したのだろうか、生後半年程の赤ん坊を抱えた母親は、ぽろぽろ涙を流し ながら、くぅばーたんに訴えた。 夫が、乱暴は働く事。自分だけでなく、子供にも手を上げるので逃げ出して来た事。 見つかったら、大変なことになると。 くぅばーたんは、話を聞いて、何度もうなずいた。そして言った。 「大丈夫よ、私が助けてあげる。私を信じてちょうだい」 岩陰で夜を明かしたのだろう、母親も赤ん坊もすっかり冷えきっていた。 くぅばーたんは、持って来たレインコートで二人をくるみ、暖かい麦茶を飲ませ、 母親にはおむすびを、赤ん坊にはバナナを食べさせて、それから、二人を連れて、歩き出した。 持って来た傘で、顔を隠しながら。 くぅばーたんの胸は、ドキドキ震えていた。暴力男が来たらどうしようかと思う気持ちと、 ドラマチックな出来事に、自分が関わっているという喜びで。 (ともかく「大志館」へ連れていきましょう。あそこなら、安心だもの) 親子を連れたくぅばーたんは、来た時よりも遠回りをして、沢山乗り換えて、 少し道に迷いながら、「大志館」に帰り着いたのは夜。 くぅばーたんが、突然、海が見たくなったのは………? 「ふふふっ、不思議ね」 そんな不思議なご縁で………、新住人登場! |
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