40 くぅばーたん18「武蔵さん大好き」

 月曜日は、くぅばーたんのお出かけ日。

 第一と第三の午前中は、中国語教室。

 第二と第四は、ボランティア(手芸品を作って寄付する会)。

 そして、友達と近くのファミリーレストランでランチして。

 午後は、ヨガかダンス。

 それから、市民病院へ。1号室の武蔵さんのお見舞いだ。

 武蔵さんは、入院してもう四ヶ月になる。

 「直ると良いんだけど………」

 お医者様の話では、直る見込みは無いそうだ。

 それを思うと、病院への坂道を登るくぅばーたんの足も、重くなる。

 武蔵さんは、独身で、子供も居ない。

 「武蔵さん、ご機嫌いかが?」

 くぅばーたんが病室をのぞくと、武蔵さんの姿が無い。

 「画伯は、リハビリだよ」

 と、隣のベッドの人が、教えてくれた。

 くぅばーたんが、持って来た荷物を整理しているところに、

武蔵さんが、車椅子に乗せられて帰って来た。

 「ああ、大家さん。いつもすまないね」

 「リハビリ、始めたんですか?」

 武蔵さんは、「もう死ぬだけだ。リハビリなんていらん」と強情をはっていたのだが。

 「やり残した事が有るからね、このまま、病院でくたばる分けにはいかんしな」

 そういいながら、武蔵さんは、ベッド移った。つらそうに、体をよじって。

 「手伝う?」

 「いや、いい。これもリハビリだ」

 武蔵さんは、本気で頑張っていると、くぅばーたんは嬉しくなった。

 「やり残した事って、何ですか?」

 「身辺整理。少しだが、遺産も有るからね。くーちゃんが、貰ってくれると良いんだが」

 武蔵さんはそういって、くぅばーたんに目をやった。

 くぅばーたんは、首を横に振った。

 「まだ、ママの事が許せないか………」

 武蔵さんが、くぅばーたんの手を取った。

 くぅばーたんは、子供のようにこくんと頷いて、「あの人キライ!」と小さな声で言った。

 武蔵さんは、くぅばーたんの両親の絵描き仲間で、三人で協同制作した絵が高く売れて、

そのお金で三人はアメリカのカルフォニアにブドウ園を買った。そこを拠点に、活動するつもり

だったのだ。

 しかし、間もなく、くぅばーたんのパパは亡くなって、武蔵さんは、その遺骨を持って日本に

帰って来た。

 くぅばーたんのママは残って、間もなく再婚した。

 農園からの収益として、武蔵さんはワインを受け取っているのだ。

 「そういえば、昨日は誕生会だっただろ?ワイン、飲んでくれたかい?」

 そういって、武蔵さんは、くぅばーたんの手をもう一度握った。

 くぅばーたんは、イヤイヤと首を何遍も振って、上を向いた。

 その目には、涙がいっぱいたまっていた。