36 くぅばーたん14「くぅばーたんの、一大事!

 サーちゃんは、「帰りの会」が終わるといなや、教室を飛び出した。

 二組の靴箱の前で、裕信君を捕まえると、

 「一緒に帰ろう、大事な話が有る」

 と、いって、靴を突っかけた。

 「でも、おれ………、田代と遊ぶ約束」

 しぶる裕信君に、サーちゃんは、

 「おばあちゃんの一大事なんだから。帰ったら、あたしんちに集合よ」

 といって、駆け去った。

 「サーちゃんばあちゃんの一大事?」

 そう聞いては、友達との約束どころではない。裕信君は、急いでサーちゃんの後を追った。

 二人は、「大志館」の玄関に着くなりカバンを放り投げて、階段を駆け上がった。

 二人の息は弾んでいる。

 「みんなー、あたしんちに集まってー」

 「みんなー」と呼ばれた、真一君とター君とナッちゃんは、真一君の家でゲーム中。

 「ここでいいじゃん。うち散らかすと、また、ママに叱られぞ」

 と、サーちゃんの弟のター君が、いった。

 「だめなの、直ぐに下に来て」

 サーちゃんの一声で、みんなは、サーちゃんの後に続いた。

 自分の部屋へ入ったサーちゃんは、本棚から図鑑を引き出して、皆に示した。

 「いい、ここから食べられる草を選び出して、皆で集めるのよ」

 「なんでだよ、めんどっちぃ!」

 ター君が、口を尖らせた。

 「おばあちゃんを助けるためよ。文句言わないで」

 サーちゃんは、イライラと図鑑のページをめくった。

 「ねー、サーちゃん、どうして草を集めるとおばあちゃんが助かるの」

 ナッちゃんがいうと、

 「あんたがいってたんでしょ、おばあちゃんが草食べてるって」

 と、ナッちゃんをにらんだ。

 「どうして、サーちゃんばあちゃんは、草を食べてるんだ?」

 真一君の質問に、裕信君が、声をひそめて、

 「貧乏だからだって」

 と、答えた。

 それを聞いた、ター君、

 「うちも貧乏だぜ。いつもママが言ってるじゃん」

 と、サーちゃんの顔を見た。

 サーちゃんは、肩をすくめて首を振った。

 「でも、道端の草は食べてないでしょ。おばあちゃんは、もっともっと貧乏なのよ」

 「じゃ、ぼくに誕生日プレゼント、くれないのかな?やだよ!」

 ター君は、やっと事の重大さを理解したようだ。

 裕信君が、ため息をついた。

 「いろいろ変わったから、郵便局員は大変なんだ」

 くぅばーたんのだんなさんの五郎さんは、郵便局勤め。

 裕信君達のお父さんお母さん、野口さん夫婦も郵便局員だ。

 「そうか………大変なのか………」

 皆は、顔を見合わせてうなづき合って………。

 そこへ、くぅばーたんが、

 「玄関に、カバンを置きっ放しにしてるのは誰?」

 と、やってきた。ふかふか湯気の出た、よもぎ入り蒸しパンを持って。

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