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「いつ来ても、この道は、大変!」 細い道を、車が二台、車体をかわしながらすれ違って行く。 そんな細い道なのに、国道に抜ける近道なので、車がひっきりなしに行き交う。 その端を、横ばいの蟹歩きで歩行者は行くしか無い。 くぅばーたんは、武蔵さんのお見舞いに行く所だ。ガラガラとショピングカーを引いて。 ショピングカーの中には、オムツがぎっしり。大人用のおむつだ。 「入院するときは、一人で歩いて行ったのにっ」 くぅばーたんは、機嫌が悪かった。荷物を引きながら車と電信柱を避けて歩くのは大変。 それ以上に、「オムツを持ってきましたよ」と告げられた時の武蔵さんの悲しそうな悔しそうな 顔を思うと、心が痛い。 武蔵さんの入院している市立病院は、懸巣山の麓に在る。くぅばーたんの家から歩いて三十五 分ほどの所。 「荷物の有るときは、車で送って行くよ」 と、五郎さんは言ってくれるのだが、五郎さんの高校のときの美術の先生だった武蔵さんの気 持ちを考えると、五郎さんにオムツは運ばせられない。 武蔵さんはモテモテおじいさんで、ガールフレンドも、生徒さんも沢山居て、お見舞客は大勢 くるが、オムツ運びを頼めるのは、くぅばーたんだけだ。 (武蔵さんは、パパの恩人だもの) くぅばーたんのパパとママは、絵描きで、八歳になったばかりのくぅばーたんを、じいちゃん ばあちゃんのところに残して、アメリカへ渡った。武蔵さんは、その頃の仲間だ。ニューヨーク で一緒に勉強していた事が有ったが、くぅばーたんのパパは、三十八歳の若さで病気で亡くなっ た。そのパパの遺骨を日本へ持ち帰ってくれたのが武蔵さん。 (親切にしてあげなくちゃ) と、思った時、ブブーっとクラクションが鳴った。 まるで、「ジャマだ、退け退け!」と怒鳴ってでも居るように。 慌ててブロック塀に体を着けて、ノシイカのようになったが、ショピングカーは残されて、 ガタンと横倒しになった。 横を、澄まし顔で高級外国車が走り抜けて行く。乗っているのは、おしゃれをしたマダム達。 一瞬の事だったが、笑い声が聞こえた気がした。 くぅばーたんの目に、涙があふれて………!! (ちっともジャマなんかしてないでしょ!歩行者優先よ、訴えてやる!) 声にならない声で叫んで、くぅばーたんは、道端のタンポポを折って、その綿毛をふーっ! (呪いの黒魔術、かけてやったぜ!) と、にやり………、それから、なに喰わぬ顔で、病院への坂道を登って行った。 |