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くぅばーたんが、夕飯の支度をしていると、サーちゃんがやってきた。 「ばあちゃん、ちょっと聞きたいんだけど………」 「今晩は、フキとワラビの煮付けですよ。 うらの佐竹さんが山菜採りにいらしてね、フキとワラビを沢山戴いたのよ」 「げっ、今日もかよ」 「なんですか、その言い方は!春の味覚、有り難いでしょ」 「今日のお返しは何?美味しそうな匂いしないけど」 サーちゃんは、クンクンと鼻を鳴らした。 「今日は、お返しなし」 「じゃ、昨日のクッキーの残りは?」 「テーブルの上の缶の中よ。さっき、皆が来てつまんで行ったけど………、 少しなら残っているかもしれない」 「みんなって、ター君とナッちゃん?」 「裕信くんと真一君も来たかしら」 サーちゃんは、クッキーの缶を開けて一声。 「ギー、たった1枚!ギギギー」 「なんですか、カケスみたいな声あげて。残念でした、うふふっ!これでがまんしなさい」 と、くぅばーたんは、冷蔵庫からレモンゼリーを出した。 そのゼリーを食べながら、サーちゃんが、 「お向かいの部屋のじいちゃん先生、もう病院から帰ってこないんでしょ。 あそこ空いたら、あたしお向かいの部屋に引っ越して来るよ」 と、いった。 じいちゃん先生というのは、1号室の画家の武蔵さんの事。 くぅばーたんのお父さんの友達で、「大志館」に住み着いて四十七年。八十八歳の老人だ。 老人だから、じいちゃん先生と呼ばれているのではなく、 皆のおじいちゃんの、五郎さんの高校の時の美術の先生だから。 お正月から市立病院に入院中だ。 「武蔵さんは、きっとお元気になります。変な事を言いふらしてはダメよ」 「だって、キーちゃんが………」 「又、キーちゃんですか。困った叔父さんだこと」 くぅばーたんは、苦笑い。 「そうか、じいちゃん先生、帰ってくるのか、残念」 「残念なって、言わないで!武蔵さんは、大事な人よ。 でも、そんなに、あの………、ブラックホールの部屋が気に入らないの」 くぅばーたんは、考えた。
「一階の2号室は、サーちゃんの家で、二階の3号室はキーちゃんの部屋。 そのお隣の5号室は野口さん、6号室は谷さんで、その隣は美鈴の所で………。 そうよ、一階の突き当たりのお風呂場の脇の小部屋。あそこをサーちゃん、使いなさいよ。 サーちゃんのうちの隣なんだし、丁度いいじゃない」 「やだよ、あんな『開かずの間』!あそこは地獄だよ!ばあちゃん知らないの? あそこ、お化けが住んでるんだよ〜」 「あらー、知らなかったわ!へー、驚いた、お化けも住んでいるの、ここの家には」 くぅばーたんでも知らない事が有るなんて! 何て不思議な「大志館」。 |