31話 くぅばーたん「『大志館』のブラックホール」

  夕方、くぅばーたんが、台所でピーナツクッキーを焼いていた時。

 「ねー、ばあちゃん、聞いてよっ!ママったらね………」

 サーちゃんが、ドスドスと足音高く、駆け込んで来た。

 晩ご飯時に、こう言ってくるのは、自分の家のおかずに不満が有る時だ。

 くぅばーたんは、にやりと笑って、

 「うちも、タケノコよ。今日は、ご近所、どこのお宅もタケノコだと思うわ。

裏の佐竹さんがタケノコ狩りにいらしてね、お土産にタケノコを沢山戴いたのよ。うちはタケノ

コご飯にするわ」

 と、答えた。

 「うちは、中華風。肉と炒めるって」

 「あら、おいしそう。少し取り替えっこしましょうか」

 サーちゃんの「聞いてよー」は、おかずの不満ではなさそう。

 (クッキーの匂いを嗅ぎ付けて来たのかな?)

 くぅばーたんは、タケノコのお礼に佐竹さんに差し上げるクッキーを焼いているところ。

 サーちゃんは、プンプン良い匂いのクッキーをつまみながら、プンプンした口調で、

 「ママが、あたしをブラックホールに落とすって言うのよ、ひどいよね」ですって。

 「ブラックホール?」

 「うん、真っ暗部屋」

   「ああ、廊下側の部屋の事ね」

 ここ「大志館」は、学校えを改築したので、建物の中央に階段が陣取り、それをはむように左右に二つ、

一階二階合わせて計8つの部屋が在る。一教室分を、一軒分の住まいに改築したのだ。

 贅沢を言えばきりがないが、広さは、四人の家族で使うには充分。

 だが、廊下側には、外の光の入らない部屋が在る。

 それを指して、サーちゃんは「ブラックホール」といっているのだ。

 「どうしてそんなことになったの?」

 「お仕置きだって」

 「なんでまた!」

 「部屋を片付けないからだって。ママったらさ、『いくら言っても片付けないんだから!こん

なに部屋がくちゃくちゃじゃ、ママの頭がぐちゃぐちゃになりそう!見えない所に行って!』

だって。ひどいでしょ」

 と、サーちゃんは、3枚目のクッキーをほうばった。

 「『ごめんなさい』って謝って、大急ぎで片付けなさい」

 「一人じゃできないもーん、ねーえ、ばあちゃん。いいでしょ、手伝ってー」

 サーちゃんに甘えられて、断われるくぅばーたんではないのだが………。

 「残念でした、手遅れです!荷物移しておいたわよ、散らかし名人さん」

 と、サーちゃんのママの麗さんが、Vサインをしながら、開いていたドアからニューッと顔を

出した。

 「ママは鬼だー!ばあちゃん、ママを叱って!サーちゃんを助けてー!」

 と、サーちゃんに言われても………、困っちゃうくぅばーたん。

 慌ててオーブンを、のぞき込んだ。

 「アラアラ、アチアチ、アー大変」ってね。