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「大志館」は、南桑畑一丁目一番地に在る。 南桑畑といっても、ここらに桑畑が有ったのは五十年も前の事。 「大志館」へは、駅前からバスで三十三分。徒歩で二十二分、自転車で十分。 歩くより、バスに乗ると時間が掛かるのは、バスが桑畑の後に出来た団地の間をぬって走っているから。 そのバスは「大志館行」で、「大志館」は終点の「大志館前」のバス停の直ぐ前。 「大志館」へは、「カケスニュータウン駅」で下りる。 「カケスニュータウン駅」は、昔は、「懸巣山下駅」という駅だった。
「大志館」は、「懸巣山下駅」から「大志館行」のバスで十分。「大志館前」下車一分の所に在ったのだ。 それが、開発が進んで、桑畑が団地に生まれ変わると、 右に習えというように、あっちの畑こっちの畑に家が建ち並び、 いつの間にか、畑も林も山も無くなって、懸巣も姿を消してしまった。 そして、「カケス建設」の「カケスニュータウン」が「懸巣山下」に取って代わった。 それだけではない、懸巣村は、あっというまに合併して市になって、カケス地区を名乗ってしまったのだ。 「たった三十年の間にですよ!」 くぅばーたんは、悔しくてたまらない。 「懸巣がカケスじゃ、巣も懸けられやしない」 くぅばーたんがそういうと、 「うまい、座布団一枚」 と、五郎さんが拍手をした。 「シャレではありません、これは闘争!」 「闘争とは、物騒な。どんな意見を通そう・・・なんちゃってね」 (これは、ぼくに座布団一枚ですかな) 五郎さんは、心の中で自分に拍手をした。 カケス地区だけでも、はらわたが煮えくりかえりそうに腹が立っていたのに、事も有ろうか、 今度はバス路線の名を変えると、市は決めて来たのだ。「大志館行き」を「カケスニュータウン行」に。 おまけに、バス停も「大志館前」を「カケスニュータウン裏」に。 「カケスニュータウン・・・裏?裏!」 くぅばーたんの怒りは大爆発! 「ここは、私のおじいさまが、寒村の桑畑の中に、新しい文化の担い手となる若者を育成しようと 英語塾『大志館』を開いた場所。その文化に触れようと、中央から訪れる人も多く、バス路線が開かれて、 『大志館』は懸巣村の文化の中心でもあったのですよ。それを、ちょこざいな!カケス建設の千兵め!」 と、バス停を団地の外れまで押し戻した。 で、「大志館」は、バス停から七分掛かる事になって、駅からバスで四十分」になった。 |