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くぅばーたんが住んでいるのは、「大志館」。古い、大きなアパートだ。 どんなに古いかというと、千九百二十二年に、くぅばーたんのおじいさんが、建てた家。 どんなに大きいかというと、そこは昔、学校だった。 くぅばーたんのおじいさんが創った、英語塾「大志館」。 日本がアメリカと戦争をしていた時、英語は「敵の言葉だ、使ってはならん!」という国の命 令で閉めさせられて・・・。 爆弾で家を焼かれた人達のために、アパートにして、その後、家の中をリホームして、今は六 家族が住んでいるアパートだ。 くぅばーたんが子どもだった頃、ここらあたりは桑畑だった。 それがどうだ、今では家が建ち並び、道路が広くなった代わりに、庭が狭くなり。 通りを隔てた向かい側には、大きな団地が出来て! 「うちも、そろそろ、ビルに建て替えた方が良いかも知れないね」 と、息子たちはいう。 でも、くぅばーたんは、聞こえないふりの知らん顔。 昨日も、二男のキーちゃんがやってきて言った。 「お母さん。この家、壊れかけてるぜ。二階のバルコニー、手すりが腐ってる。今にミーちゃ んか、ナッちゃんか、だれかしら落っこちるよ」 「あら、大変。さっそく直さなくちゃ」 「これじゃ、地震の時が、心配だな」 「それは大丈夫。この家は、あたしのおじいさんが、『屈強な若者百人が、一度に寝返りを 打っても壊れない家にしてくれ』と、注文して建てた家です。地震でも壊れません」 それをきいて、キーちゃんが、にやり。 「じゃ、二階の僕の部屋に、グランドピアノいれていいかな?」 キーちゃんは、くぅばーたんが、困ると思っているみたいだが。 「はいはい、どうぞ。入るものならね」 と、くぅばーたんは、澄ました顔。 なぜなら、くぅばーたんは知っている。この家は、ドアも窓も小さいから、グランドピアノは 入らないし、出せないと。 昔使っていたグランドピアノは、この家が出来上がる前、壁を作る前に入れた。そのグランド ピアノは、使わなくなっても外に出せないから、書庫の奥に隠してある。 グランドピアノを、こっそり隠しておける家、これこそ魔女にふさわしい家だと、くぅばーた んは「大志館」をとっても気に入っている。 「だれが、建て替えるもんですか」 くぅばーたんの決心は、固い。 |