22話 くぅばーたん「魔女にふさわしい家」

 くぅばーたんが住んでいるのは、「大志館」。古い、大きなアパートだ。

 どんなに古いかというと、千九百二十二年に、くぅばーたんのおじいさんが、建てた家。

 どんなに大きいかというと、そこは昔、学校だった。

 くぅばーたんのおじいさんが創った、英語塾「大志館」。

 日本がアメリカと戦争をしていた時、英語は「敵の言葉だ、使ってはならん!」という国の命

令で閉めさせられて・・・。

 爆弾で家を焼かれた人達のために、アパートにして、その後、家の中をリホームして、今は六

家族が住んでいるアパートだ。

 くぅばーたんが子どもだった頃、ここらあたりは桑畑だった。

 それがどうだ、今では家が建ち並び、道路が広くなった代わりに、庭が狭くなり。

 通りを隔てた向かい側には、大きな団地が出来て!

 「うちも、そろそろ、ビルに建て替えた方が良いかも知れないね」

 と、息子たちはいう。

 でも、くぅばーたんは、聞こえないふりの知らん顔。

 昨日も、二男のキーちゃんがやってきて言った。

 「お母さん。この家、壊れかけてるぜ。二階のバルコニー、手すりが腐ってる。今にミーちゃ

んか、ナッちゃんか、だれかしら落っこちるよ」

 「あら、大変。さっそく直さなくちゃ」

 「これじゃ、地震の時が、心配だな」

 「それは大丈夫。この家は、あたしのおじいさんが、『屈強な若者百人が、一度に寝返りを

打っても壊れない家にしてくれ』と、注文して建てた家です。地震でも壊れません」

 それをきいて、キーちゃんが、にやり。

 「じゃ、二階の僕の部屋に、グランドピアノいれていいかな?」

 キーちゃんは、くぅばーたんが、困ると思っているみたいだが。

 「はいはい、どうぞ。入るものならね」

 と、くぅばーたんは、澄ました顔。

 なぜなら、くぅばーたんは知っている。この家は、ドアも窓も小さいから、グランドピアノは

入らないし、出せないと。

 昔使っていたグランドピアノは、この家が出来上がる前、壁を作る前に入れた。そのグランド

ピアノは、使わなくなっても外に出せないから、書庫の奥に隠してある。

 グランドピアノを、こっそり隠しておける家、これこそ魔女にふさわしい家だと、くぅばーた

んは「大志館」をとっても気に入っている。

 「だれが、建て替えるもんですか」

 くぅばーたんの決心は、固い。

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