虎に食われる!     

 これは、ルイジさんが生まれた村で起こった、本当の話です。

 その村は、南の国の、竹がうっそうと茂った山の中に、ありました。

 村には、ガスはもちろん、電気も来ていません。病院も、学校も、ありません。

 その村の一軒の家に、父さんと母さんと、七人の子どもが住んでいました。

 貧しいながら、父さん母さんは、一生懸命働いて子どもを養っていました。

 子どもたちは、仲が良く、小さい時から家の手伝いをして、力を合わせて暮していました。

 そして、時々、村々を廻って教えに来る「先生」に字を教わって勉強していました。

 皆、勉強が好きでしたが、中でも二男は非常に勉強が出来たので、「先生」のお世話で、

特別に町の学校に行くことになりました。

 町までは、歩いて五日かかります。父さんが、二男を町まで送って行くことにしました。

 父さんと二男は、お米を背負って、出発しました。なぜ、お米を持って行くのかって?

 道々、山に生えている竹を切り、その筒に米を入れて焚いて食べて、野宿をしながら、町まで行くのです。

 父さんは、二男にむかって、

 「チェン、お前は頭が良い。頑張って勉強して、村の役に立つ人間になるんだぞ。

兄さん、姉さん、弟や妹を幸せにしてやれよ」

 と、いいました。

 二男は、一家の、いいえ、村の希望だったのです。

 けれども、父さんも二男も、町にはたどり着けませんでした。

 旅の途中で、鉄砲で撃たれて殺されたからです。

 なぜ殺されたのか?誰も知りません。

 わずかな米をねらった強盗の仕業だという噂でしたが、別の人達は、山の奥でケシを栽培して

麻薬を作っている悪い奴等と間違われて、政府軍に撃たれたともいっていました。

 本当のことは、分からないままです。

 父さんのいなくなった一家は、ますます貧しくなりました。

 でも、母さんは、村の人に助けを求める事は、しませんでした。

 どこの家も生活が苦しいのを知っていたからです。

 そして、とうとう食べる物が無くなりました。

 そこで、母さんは、タケノコを取りに、山へ行くことにしました。山には虎がいます。

 行くのは危険だって、母さんも知っていたのですが………。

 山へ行ったまま、母さんは、夜になっても帰って来ませんでした。

 山で、虎に襲われて喰われてしまったんです。

 父さんも母さんもいなくなって、残された子どもたちは、どうなったのでしょう。

 兄妹バラバラに引き取られて………。それぞれに元気に暮しているらしいのですが。

 ルイジさんは、言いました。

 「私の国に、日本の子どもたちがもっている、百分の一でも平和が有ったら、

千分の一でもお金が有ったら、良かったのにね」と。

 これは、本当に、本当にあった話です。

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