119 くぅばーたん家賃、値上げ?

 五郎さんは、中華料理が大好物。

 中でも黒酢を使った酢豚がお気に入り。

 くぅばーたんが酢豚の最後の仕上げのとき片栗を入れている時、ナッちゃんが、

 「ばーちゃん、早く来て!」

 と、叫びながら、台所に飛び込んで来た。

 くぅばーたんは、ガスを止めると、急いでナッちゃんの後を追った。

 バタバタ大慌てて階段を上がると、キーちゃんの部屋に皆が集まっていた。

 「ほら、見て見て!サラが歩いてる」

 キーちゃんのパソコンを囲んで。

 「これは、何なの?」

 「谷さんが送ってくれた画像」

 「谷さん、サラのとこに居るんだよ」

 ママの広子さんに連れられて、サラは九州の久留米に里帰りをしている。

 カメラマンの谷さんが、取材旅行中に、久留米に寄ったのだという。

 「たった一月半見ないうちに……」

 ハイハイしていたサラちゃんは、伝い歩きをしていた。画像が消えても、誰も部屋に戻ろうとしない。

 「サラちゃん、いつ帰って来るの?」

 ミーちゃんが、くぅばーたんにきいた。

 「さー、いつかしら。でも、サラちゃんのおじいちゃんもおばあちゃんも、サラちゃんといっしょに居たいでしょうから」

 くぅばーたんは、ミーちゃんの頭をなでながら答えた。

 「広子さんのお父さんが、『仕事が無いのに帰ってどうする』って、言うんだって」

 情報通のサーちゃんが、報告。

 「広子さんは、帰りたがっているんだって。ここが、好きなんだってよ」

 サーちゃんの目が、

 「ばーちゃん、何とかしてあげて」

 と、訴えていた。

 「それなら簡単よ。ばーちゃんの知り合いが、市民病院に入院したから、その付き添いを広子さんにお願いしましょう」

 くぅばーたんの返事に、サーちゃんは飛び上がって喜んだ。皆も大喜び。

 「でもね、お母さん。広子さん達の生活はどうするの」

 キーちゃんが、くぅばーたんにきいた。

 「武蔵さんのいたお部屋に住んでもらって」

 「住まいじゃない、収入」

 いつになく、キーちゃんは厳しい。

 「もちろん付添料は払うわよ。私が」

 「お母さん。ちゃんと考えてみてよ」

 キーちゃんが、もっと厳しい声で言った。

 「お母さんは、土地は持っていても、収入が無いんだよ。税金ばっかりかかるんだ」

 その晩。

 片栗粉がだま玉に固まった酢豚を食べながら、くぅばーたんが五郎さんに言った。

 「ここのお家賃、少し値上げしょうかな」

 「まずいよ。それも、酢豚も、まずいまずい」

 五郎さんは、そう言って首を横に振った。