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「ねえー、お義母さん、チョット聞いて!」 と、くぅばーたんの部屋をのぞいたのは、サーちゃんのママ。麗さん。 「おや、麗さん。早いお帰りだね」 返事をしたのは、五郎さん。 「お義母さんは?」 麗さんが、そうたずねると、 「病院だよ。昔の知り合いが、市立病院に入院したんでね。手伝い」 と、五郎さんは答えた。 「えー、又看病ですか?大変でしょ」 一号室に住んでいた武蔵さんが、今年のお正月から市立病院へ入院していて、くぅばーたんは 看病に通っていた。その武蔵さんが、天国に召されてふた月ばかりというのに、大変だなと、麗 さんは思ったのだ。 「くーちゃんは、十代のときから、おばあちゃんの世話をして、おばあちゃんを送るとおじい ちゃん。おじいちゃんの看病をしながら、子育てと、忙しい人だったからね」 「あたしには、真似出来ないわ」 と、麗さんは、大きな溜め息をついた。 「そのくーちゃんに、何か用なの?」 「用じゃないけど……、愚痴を聞いてもらいたくて」 「僕で良ければ、聞きますよ」 五郎さんがそう言ってくれたので、麗さんは、五郎さんに話す事にした。五郎さんが煎れてく れた、美味しいコーヒーを飲みながら。 麗さんの愚痴はこうだった。 隣町の、「病院前」駅の駅前ビルの五階と六階のインテリアを頼まれていたが、その依頼人の 房総建設の若社長という人が、気の多い人で困る。事務所にすると言ったり、自宅も兼ねたいと 言ったり。 「それが、今度は、画廊にすると言い出したんですよ。呆れた話でしょう、お義父さん」 と、麗さんが、五郎さんの顔を見た。 五郎さんは、アハハッと笑って、 「その呆れたアイディアの犯人は、くーちゃんだね、きっと。武蔵さんの絵を飾ってもらうん だと張り切っていたから」 「武蔵さんの絵を飾る画廊?」 「ああ。房総建設の先代の社長は、くーちゃんの知り合いでね。何でも、その社長は、亡く なった武蔵さんに恩があるとかで」 「武蔵さんの絵を飾る……」 麗さんの目が、きらりと光った。 「入り口には、武蔵さんの写真が欲しいわね。確か、谷さんが、武蔵さんの写真を沢山撮って いたから、何か持ってるかもしれないわ。早速、連絡を取って……」 麗さんは、立ち上がると、言った。 「あたし、事務所に戻ります。今夜は遅くなるので、子ども達をお願いします」 その後ろ姿を見送って、五郎さんはつぶやいた。 「現役は、元気だね」と。 |