|
|
|
「さあさあ、右側歩くんだよ。車に気をつけてな」 五郎さんが、後ろの子ども達に、注意。 五郎さんを先頭に、タッ君、真一君。くぅばーたんにナッちゃん。裕信君にサーちゃんに亜由 美ちゃん。そして、ミーちゃんと美鈴さんの十人が行進中。 行き先は、カケス中央病院。安平さんのお見舞いに行くところだ。 「安平さんって、だれなの?」 亜由美ちゃんが、サーちゃんにきいた。 「『大志館』に昔住んでた人だって」 裕信君が、そう答えた。 「昔じゃ、やっぱ年寄りかな?」 サーちゃんのところに遊びに来ていた亜由美ちゃんは、ついでについて来たのだ。 「ねー、ハンバーガー屋さんはまだ?」 ナッちゃんが、くぅばーたんを見上げた。 「バカだな、ハンバーグを食べに行くのは、お見舞いが終わってからだよ」 タッ君と真一君が、「なー」と、顔を見合わせてうなずいた。 他の皆も、ハンバーガーが目当てで、お見舞いに参加しているだけだ。 総勢十人でのお見舞いに、安平さんは、大喜び。 「よく来てくれた。ほー、皆大きくなって」 そういわれても……、初めて会う裕信君、真一君、亜由美ちゃんは、困って……。 くぅばーたんが、三人に(いいのよ)と目で合図して、挨拶をした。 「春に、千葉のお宅をお訪ねしたら、お引っ越しした後でビックリしましたよ。ご病気だった んですってね」 「ああ。もうお迎えが来てもいい歳だけどね、病気知らずだったものだから、慌てたよ。やり 残した事があるからね」 安平さんは、しわだらけの顔で、フォフォ笑った。 「やり残した事って、何ですか」 「故郷の奴らを見返してやる事さ。うちの親達はここらの小作で、酷い目にあった。それで、 戦時中、新天地を求めて満州に開拓に入って、地獄を見て。貧乏人は、いつでも貧乏くじ引かさ れる。やっとの思いで引き上げて来ても、帰るところはなくて、元の地主にも突き放されて…。 その地主が、山田だ」 と、安平さんが、窓の外を指差した。 「うちの幼稚園もその山田さんから、土地を借りているのよ」 と、美鈴さんが言うと、 「幼稚園の土地……か。あの土地は、くぅばーたんにプレゼントするつもりで買った。行き場 のないあたしらに住むところをくれて、仕事を探してくれたのは、「大志館」の大先生だ。命の 恩人だからね。そして、仕事の元手を貸してくれたのは、絵描き先生だった。あの人にも恩があ る」 そう、安平さんが、言った時、誰かのお腹がクーッと鳴って、皆で大笑い。 そこで、おいとまをして。 ハンバーガー屋めがけて、出発進行!だ。 |