113話 くぅばーたん78鬼母物語

 朝、サーちゃん達が登校すると、裕信君が、校門の前で、サーちゃんを待っていた。

 「学校、終わったら、付き合ってくれ。大事な用事があるんだ。ここで待ってる」

 もったいぶった様子で、裕信君はそう早口で言うと、走り去った。

 「付き合ってだったよ」

 「大事な用事だって!」

 真帆ちゃんも、亜由美ちゃんも興味津々。

 放課後、約束通り、裕信君は、門のところでサーちゃんを待っていた。

 裕信君は、サーちゃんに、懸巣山の方を指差しながら、

 「うちの大伯母ちゃんが、サーちゃんのおばーちゃんの子どもの頃の事を知ってるんだって

さ。話を聞きに行こう」

 と、先に立って歩き出した。

 学校から懸巣山までは、ずいぶん遠かったが、裕信君とサーちゃんは、へこたれずに歩いて来

た。真帆ちゃんと亜由美ちゃんもついて来た。

 裕信君の大伯母ちゃんは、八十三歳。畑仕事を早めに切り上げて、裕信君のために、イモを蒸

かして待っていた。

 四人は、縁側に腰掛けて、ふかしイモと麦茶をご馳走になりながら、話を聞く。

 大伯母ちゃんは、くぅばーたんが財産放棄を迫られている話を聞くと、自分の事の様に悔しがった。

 「財産放棄しろってか?つまり、あのお母ちゃんが、『あんたには一銭もやらね』って、言っ

てるのか?あの人の言いそうな事だ」

 大伯母さんは、空を睨みつけて話し始めた。

 「『大志館』の奥さんのお母ちゃんは、それはそれは美人でな、映画女優の様だと評判だっ

た。自分でも、美貌には自信があった様子で、鼻高々。鼻持ちならねかったの。その上、生まれ

て来た赤ん坊を見て、「なんて不器量なの。あたしの子じゃないみたい」って、ろくに抱きもし

なかった」

 と、子ども達の顔を見回した。

 「可愛くない赤ちゃんって、おばーちゃんのこと?おばーちゃん、かわいいよ!」

 サーちゃんは、腹を立てた。

 「ああ、今の「大志館」の奥さん、くららさんの事だ。そうそう、くららという名前は、昔の

有名なピアニストの名前だそうで、生まれる前から、「あたしの子どもは絶対ピアニストにす

る」と、奥さんのお母ちゃんは、決めていたそうだ」

 「バカじゃないの!自分勝手に」

 真帆ちゃんも怒った。

 「ピアノの練習は厳しくて、言葉で叱るだけでなく、折檻もして……」

 「折檻って、ぶつんでしょ?ひどーい!」

 亜由美ちゃんも怒った。

 「あげくの果てに、子どもほったらかして、夫婦でアメリカへ行っちゃって」

 「ヒドイ話だよねー」

 裕信君が、大きくうなずいた。