112話 くぅばーたん77「お役立ち分数」

 「大志館」の一階のホールで、くぅばーたんと、弁護士の克彦さんの会談は始まった。

 ここなら、「大志館」全体に声が届くし、どこからも様子がうかがえる。

 「克彦は、頭の切れる奴だよ。お母さんが騙されないように、皆で見ていてあげよう」

 「大家さんの証人になりますよ」

 話し合いの場をここにするように勧めてくれたのは、キーちゃんと野口のお父ちゃんだ。

 大人も子どもも、皆が聞き耳を立てる。

 ホールに、くぅばーたんの声が響いた。

 「それじゃ、話が違いますよ。母の娘さんのマリアさんからの手紙では、『農場を処分して、 

母を病院に入れたい』と書いてありましたよ」

 くぅばーたんが、声を荒げて言った。

 「それは、娘さん、おばちゃんの妹さんのマリアさんの意見でしょう」

 克彦さんは、くぅばーたんを小母ちゃんとよんだ。弁護士にはふさわしくない呼び方だが、そ

う言い慣れているからだ。

 「僕は、小母ちゃんのママの聖子さんの代理人です。聖子さんは、農場を、息子の大地さんに

継がせたいから、おばちゃんに相続放棄をしてくれと言って来てるんです」

 「ま……、ママも妹も、どちらも、私に武蔵さんの財産の相続を放棄しろ、つまり、何もあげ

られないと言って来てるところは同じですけど……」

 くぅばーたんは、お金が欲しい訳ではないが、こうあからさまに、「何にもあげない」と言わ

れると、海の向こうから「あかんべー」をされたようで腹が立つ。

 克彦さんが、頭をかきかき言った。

 「ミセス聖子ウイリアムズさんのいい分は、強引です。昔、ブドウ畑を、おばちゃんのパパと

マと武蔵さんの三人で買った。つまり持ち分は3/1ずつです。おばちゃんのパパが亡く

なって、その半分、3/1の2/1、つまり6/1が小母ちゃんの物になった」

 「はあ?私の物?いつから?」

 「ここで、武蔵さんの分の3/1もおばちゃんの物になると、6/1+6/2で、6/3

つまり、2/1、半分がおばちゃんの物になった事になる。それを売られてしまうと、

農場としてやって行けないと言う訳です。どうでしょう?」

 克彦さんが、財産放棄の書類を差し出した。

 「へー、そうー、私が、農場の権利を半分持っているのね」

 くぅばーたんにとって、寝耳に水の話だ。

 6/1の話だって、初耳なのだ。

 「大家さんは、金持ちなんですね」

 と、野口のお父ちゃんが、目を剥いた。。

 くぅばーたんは、納得がいかない。

 「私が半分持っていてたら、どうしていけないの?何が困るの?」

 克彦さんが、額の汗を拭った。

 「農場を売りたがっているのは、私じゃないでしょ、マリアさんでしょう?それをなぜ、私

が、悪者扱いなの?どうして?私は、欲張りじゃないのに」

 くぅばーたんは、悔しそうに唇をかんだ。