110話 くぅばーたん75「愉快な大運動会」

 懸巣小学校の校庭は、懸巣神社の秋祭りの境内のように、大いに賑わっていた。

 昨日の懸巣小の運動会の飾り付けの上に、商店会の花飾りを付けたのだ、目にも賑やか。

 駅前の商店会の協力で、商品も盛り沢山。

 「大したもんになっただな、カケスも」

 「まっこと、ニュータウンの名に恥じませんな」

 来賓は市長さんはじめ、市会議員の連中。

 「若い者が居るとこも、あるんだね」

 「あの人らは、東京に働きに行ってる他所者達さ」

 「農家やるより、アパート経営がいいというのは、ほんとの話だろ」

 農家の多い、桑畑6丁目の選手団の平均年齢は、五十八歳。

 それに引き換え、カケスニュータウンの団地自治会の選手は、若さ盛り盛りだ。

 「大志館」は、桑畑一丁目の中心的な存在だが、運動会の花形スターのカメラマンの谷さん

は、取材に出かけたまま未だ帰ってこないし、正太郎さんも今朝から、地方公演へ出かけて行っ

たしで……。

 「どうだね、おたくの選手達は?」

 カケスの千兵さんが、大会役員の腕章をつけてやってきた。

 「どうせ、ニュータウンが優勝だって、自慢しに来たんでしょ」

 くぅばーたんが、千兵さんを睨みつけた。

 「いやいや、自慢は自慢でも、今日は、息子自慢だよ」

 千兵さんが、後ろに就いて来た若者を指差してにやりとした。

 「あら、克彦さん?おたくの息子さんの」

 「その克彦が、この度、弁護士になって帰って来て。それも、アメリカの弁護士と来ちゃ、自

慢もして歩きたくなる」

 千兵さんが、ガハハっと笑って、克彦さんが頭をかいて、照れてみせた。

 「へー、あの泣き虫カッちゃんが、アメリカで弁護士?そりゃすごいわ」

 「鳶が鷹を生んだではなくて、?が鷹を生んだですな。このカケタカ!」

 五郎さんは、こう言って、自分で受けて、

 「カケスにタカはカケタカで、カケタカかったからカケタカ、タカタカ」

 と、タカタカ言って笑った。

 (大人って、何で運動会が好きなんだろ)

 サーちゃんは、町会から配られるお菓子だけが楽しみなのだ。

 野口のお父ちゃんは、冷えたビールがお楽しみ。

 (早いとこ、ちょこっと走って、クィーっと、いきたいもんだ)

 と、ツバを飲み込んでいる。

 キーちゃんと裕信君は、後ろの方で準備体操中。

 殊勲選手には、商品券が出るときいて、張り切っているのだ。

 くぅばーたんは、克彦さんを見つめて、うんうんと、大きくうなずいた。

 (弁護士みーっけ!これで、私の悩みは解決よ)と。