104話 くぅばーたん70「サーちゃんの悩み」

 「サーちゃんの病気、あれは仮病ですね」

 くぅばーたんは、ガラガラ、ショピングカーを引きながら、家を出た。

 「運動会が嫌で、休んでるのかしら?それなら、無理矢理でも行かせなくちゃ」

 自分も運動が苦手なくぅばーたんは、サーちゃんの気持ちが分かる。

 「でもね、人生は楽なもんじゃないのよ。嫌な事から逃げていては、前へ進めません」

 と、団地の角を曲がった。

 「元気なのに学校を休みたがる子と、病気なのに学校に行きたがる子。本当に大変」

 病気なのに学校に行きたがっている子というのは、ター君の事。本当に大変なのは…?

 「でもね、五郎さんが家に居てくれるようになって、大助かりよ」

 五郎さんが、学校を休んでいるサーちゃんとター君をみていてくれるから、こうして、駅前ま

で、お使いにも出られるのだ。

 「一人で、家の事、外の用事、孫の世話は大変なの。もう私も若くないんだから」

 大変なのは、くぅばーたんの事らしい。

 「でもね、気になるのよ、サーちゃんの事が。なんか、ひっかかるのよ。ずる休みは運動会の

せいじゃないんじゃないかって」

 あれこれ考えているうちに、駅前に着いた。

 と、くぅばーたんは、声をかけられた。

 「サーちゃんのおばーちゃん」

 みると、真帆ちゃんと亜由美ちゃんのママが、歩道の脇で「お茶」していた。店先にテーブル

を出して、コーヒーを飲ませる店、カフェテラスで。

 「お使いですか?ご一緒にいかがですか」

 くぅばーたんは、サーちゃんの様子が聞きたくて、「ご一緒」する事にした。

 「このお店のコーヒーは、お勧めですよ」

 「自家焙煎でね、煎り立ての豆をお客の注文で挽いてくれるんですよ」

 二人のお勧めで、くぅばーたんは「当店オリジナルブレンド」のコーヒーを頼んだ。

 「お二人は、仲が良いんですね」

 くぅばーたんがそういうと、真帆ちゃんのママと亜由美ちゃんのママは、声を合わせて、

 「大学の時からの親友です」

 「偶然、子どもも同じ歳で」

 「それで、一緒に、ここへ越して来て」

 「マンションも一緒ですの」

 と、言った。

 くぅばーたんは、大きく何度もうなずいた。

 「それで、一緒にディズニーランドへ?」

 真帆ちゃんのママが、

 「うちは、本場には連れて行けないから」

 といい、亜由美ちゃんのママが、

 「おたくは、皆さんでアメリカのディズニーランドにいらっしゃるんでしょ」

 と、微笑んだ。

 「はあ?アメリカへ?」

 「サーちゃんが、計画中なんですって」

 「うらやましいわー」

 そんな話、くぅばーたんは初耳だったが、

 (サーちゃんの悩みは、運動会じゃない)

 と、くぅばーたんは確信した。