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古いズボン 昔々、大昔。歩いて旅をしていた頃の亊。 木の皮を裂いて、布を織って、自分が狩った獣の皮をなめして、ズボンをこしらえていた頃の話。 ある村に、アーという若者がおりました。 アーは、空の雲を見る度、 「あの雲のように、自由だったらなー。どこまでもどこまでも、歩いていけたらなー」 と、思っていました。 川を上って行ったら、どこに行き着くのだろう?山の向こうには何が有るのだろう? 日の沈むところには、何が待っているのだろう? 未だ見ぬ土地に憧れていたアーですが、家には、体の弱い両親と、沢山の弟と妹がいました。 家族はアーが頼りです。家族を捨ててはいけません。 アーは、旅に出るのを諦めて、家族のために働いて、いつしか年を取っていきました。 或る年の春。アーの許に、孫のナーがやって来て言いました。 「爺ちゃん、おれは、川を上って、山を越えて、外の世界を見てみたい」と。 アーは、自分が果たせなかった夢をナーに叶えてもらいたいと思いました。 けれども、心配なのは、ナーの事です。元気者ですが、未だ幼い少年でしたから。 一人で歩いていけるだろうか。一人で漁が出来るだろうか?獲物を狩る事が出来るだろうか?病気になったら? そこで、まだまだ元気なアーは、ナーと一緒に行こうと思いました。 旅をしながら、自分が持っている知恵をナーに伝えようと思ったからです。 旅は、なに事も無く、無事に進みました。
アーは、じぶんの古いズボンを、新しいズボンと取り換えて、その新しいズボンを、ナーに穿かせました。 そして、自分は、ナーが穿いていたいたズボンを穿いて、トットコ、今来た道を戻って行きました。 「新しい革ズボンには、新しい革、若い頭には新しい知恵だ。 新しい場所で、新しい知恵を自分で身につけておいで」 と、ナーに言い残して。 |